人々の生活は、法制度、経済制度、家族制度など、さまざまな制度によって方向付
けられます。現代社会においては、さらに、国民国家の枠組を越えたグローバルな要
因にも大きく影響されます。いっぽう人々は、それらの制度によって動かされるだけ
でなく、制度を動かし作りかえていく「行為主体」の柔軟に側面ももっています。制
度を柔軟に運用しながら「より良き生活の実現」にむけて生活設計をおこなっている
のです。成長過程にあるアジア諸国の地域社会経済の形成を理解するうえでは、この
ような人々と諸制度間の関係が明らかにされなければならないのです。
開催日時:2002年12月21日(土)13:00 - 18:00
開催会場:鹿児島大学総合教育研究棟201講義室(共通教育門横7階建てビル)
企画協力:西村 知(鹿児島大学法文学部)
入場無料(どなたでも参加できます)
[要旨] 奄美諸島(喜界島以南与論島以北)に棲息しているハブ属のヘビは、ハブTrimeresurus flavoviridis とヒメハブTrimeresurus okinavensis の二種であるが、奄美大島、徳之島にはハブ、ヒメハブの二種が棲息するが、加計呂麻島、与路島、請島、枝手久島にはハブしか棲息せず、喜界島、沖永良部島、与論島にはハブ、ヒメハブのいずれも棲息しないなど、特異的な分布をしている。 ハブの餌は主にネズミで、ネズミが多いサトウキビ畑や人家近くがハブの棲息地である。ただ、孵化後の幼蛇の餌については殆ど分っていない。繁殖については、ハブは全長120 cm以上の雌ハブが成蛇、ヒメハブは全長45 cm以上の雌ハブが成蛇と考えられている。今回の発表では、奄美諸島におけるハブの生活史について概略を述べる。
[要旨]カンキツの胚及び胚様体から、継代培養しても胚様体形成能を失わないカルス(embryogenic callus)が得られる。これらのカルスは培地に加える糖類を変えることによって胚様体を形成し、また、得られた胚様体から、再び胚様体分化能を持つカルスが再誘導できる。すなわち、胚あるいは胚様体からカルスを誘導し、それらの胚から再び胚様体を形成させるという系が明らかになったので、この系を「シャトルカルスシステム」と名付けた。胚様体は葯培養によっても得られる。カルスからは容易にプロトプラストを得ることができ、また、プロトプラストから胚様体を経て、植物体が得られる。このシャトルカルスシステムを利用して、細胞融合や遺伝子導入を行うことができる。
[要旨]植物は常に世界中で経済、産業、そして文化において重要な役割を果たしてきた。インド―マレーシア地域において最大、あるいは世界全体ではブラジルについで2番目に大きいインドネシアの熱帯雨林は生物多様性においても、民族グループにおいてもとても多様な地域である。Zingiberaceae科の植物はインドネシアの文化において長い間重要な役割を果たしてきた。例えば、ジャワ族においては経済的価値を持った伝統的な薬草として使われてきた。分類学的にも複雑で大きな科で分布も広いためとても興味深い仲間である。
この研究会ではインドネシアのZingiberaceae科の植物について野外研究と文献をもとに、伝統的な使用方法とその分布について考察する。この仲間の内18属109種は多くの目的に使用されているが、特に薬草と調味料として用いられている。もっとも経済的に重要な属はCurcuma、Zingiber、Amomum、Etlingera、そしてAlpiniaである。インドネシアのZingiberaceaeの研究では20属386種が報告されている。もっとも多くの種数をもつ属は3つあり、Alpiniaが92種、Amomumが66種、そしてRiedeliaが62種である。
[この要旨の原文は英文。]
[要旨] フランス北西部に位置するブルターニュ地方は、フランスでも際立って地域的
アイデンティティの自覚が強い地方として知られている。その存在は中央集権
国家フランスの諸地方のなかで異彩を放っているといってよい。この発表では
そうした独特のアイデンティティの由来と歴史的背景を紹介しながら、その多
様な発現形態を政治・社会・文化の各領域において探り、「ポスト国民国家」
時代のヨーロッパにおける新しい地方のあり方を検討する。
[要旨] 日本における亜熱帯林は南西諸島に、そのほとんどが分布している。亜熱帯林の林木種数は90種/ha以上で熱帯にも比肩しうる種の豊富さである。その一方で暖温帯の常緑照葉樹林と群集構造の特徴が類似している。すなわち亜熱帯林は、「組成的には熱帯に近く構造的には暖温帯に近い」、といった植生の移行帯として認識できる。また南西諸島は、生物学的に貴重な地域であるにも関わらず、その亜熱帯林は人為活動によって衰退・劣化しつつある。例えば。沖縄島北部における森林保全の問題(いわゆるヤンバル森林伐採問題)は、本研究課題の大きな社会的背景の一つである。すでに過去5年間に渡って、長期的に亜熱帯林の動態をモニタリングするデザインを構築してきた。最終的な目的は、亜熱帯林の管理・保全といった応用面での貢献を目指している。
今回の発表では、亜熱帯林の種多様性維持機構とその動態の特徴について、以下のような視点に基づいて報告したい。南西諸島の亜熱帯林では、森林伐採は大きなインパクトとして存在する。したがって伐採に応じた様々な発達段階の林分がランドスケープレベルでモザイク上に分布している。一方この地域のランドスケープのもう一つの特徴として、複雑な地形が挙げられ、それに応じて、林分構造や種組成が異なっている事がある。地形の複雑さは言いかえれば、土壌の養分・水分条件など物理的環境条件の異質性である。すなわち、人為影響、複雑な地形等が、物理的環境要因を介して、林木種の分布パターンや成長動態、種間の競争関係に影響を与え、結果的に亜熱帯林の多様性に寄与していることが仮説として設定できる。この仮説に対する定量的分析は未だ十分ではないが、断片的なデータから亜熱帯林の林木種多様性について話を進めたい。
[要旨] 三十数年も前のことになるが、植物生態学を専攻する大学院生であった小生が農業地理学のゼミに出席していた時、デンマークの小母ちゃんが書きおろしたばかりのあまり厚くはない本を読まされた。その小母ちゃんの名はEster Boserupと言い、当初、学界でのその本の評判はあまりかんばしいものではなかった。ところが、1970年代になって考古学者、人類学者、地理学者のかなりが彼女が提唱したモデルの熱烈な支持者となった。彼女のモデルが小生を驚かせ、また、魅了したのは、彼女が、焼き畑農業が大量の補助エネルギーを投入する近代農業体系を除くほかのどの耕作体系と比較して、最も労働生産性が高いと喝破したからであった。この見解は当時も、また、いまだに現在でも一般常識に真っ向から対立するものである。1972年に博士最終試験に合格した直後から、小生は彼女のモデルの出発点となる仮説が現実に対して確かに当てはまるかどうかを実証するのをめざして今まで学問的努力を重ねてきた。今回の研究会では、こうした点についてやや詳しく述べる。
開催日時 2002年2月23日 (土) 午後1時~5時
開催会場 鹿児島大学農学部連合大学院 (農学部正門横)
企画、座長 桑原 季雄(鹿児島大学法文学部)
2) 徳丸 亞木(鹿児島大学法文学部)
奄美における民俗宗教の現在
[要旨] 南西諸島の島嶼社会は、シマを単位として自律的・閉鎖的なコスモロジーを構成・維持してきたと理解されている。今回は、奄美大島名瀬市小湊地区を例として、聖地、神社、伝統的宗教者、モーヤ、先祖祭、カトリック教会、新宗教などシマ社会における民俗宗教の現況とその変容過程について報告し、各信仰表象との関わりからみた、住民のアイデンティティ形成についても論じたい。
3) 土田 充義(鹿児島大学工学部)
奄美の風土と住まい
[要旨] 奄美は台風の常襲地帯であり、台風対策は住民の大きな課題であった。台風にびくともしない住まいを建てる方法もあるし、台風の力を認めて、うまく処置する方法もある。奄美の人々は後者の方法を用いた。尾根を低く、勾配を緩く、周囲に塀を立て、正方形に近い住まいにした。規模は小さい方が好ましい。また火災から守るために、高倉群を住居から離し、家屋の方には燃え難い樹木を立てた。このような先達の知恵を探ってみたい。
コメンテーター 田畑 千秋(大分大学教育福祉科学部)
続いて総合討論
開催日時 2002年2月16日 (土) 午後2時~4時半
開催会場 鹿児島大学総合教育研究棟201講義室(共通教育門横7階建てビル)
企画協力 波多野 浩道(鹿児島大学医学部)
1) 野地 有子(札幌医科大学保健医療学部)
健やかな長寿のために
[要旨] わが国は、世界の中でも最も長寿の国となり、中でも沖縄を中心とした多島域が注目されています。沖縄には、恵まれた自然環境に加えて、食事を中心とした生活のしかたや、長寿者の生活を支える社会のしくみと長寿文化があるといわれております。そこで、最近の長寿に関する研究成果などを踏まえて、元気に長生きするためにはどのような事が大切なのか考えてみましょう。また、アメリカの元気な高齢者の生活を紹介しながら、生活習慣や文化の違う国の人々は、どのように健やかな長寿のための努力をしているのか参考にし、私たちの生活をふりかえる機会といたしましょう。
2) 宮城 重二(女子栄養大学栄養学部)
沖縄に学ぶ「長寿7カ条」
[要旨]
・肉類を過不足なく食べる。
・ 豆類特に豆腐も肉類とバランスよく食べる。
・ 野菜類や海藻類も多く食べる。
・塩分や砂糖の摂取が少ない。
・運動や労働を続け、年中体を動かす。
・「テーゲー主義」で心のゆとりをもって生きる。
・「共存社会」「ヨコ社会」「オンネ社会」を生きる。
続いて自由懇談
[要旨] デング熱・デング出血熱はデングウイルスの感染によって発症する急性の熱性疾患で ある。このウイルスは熱帯地域の人口密集地域に生息する熱帯シマカによって媒介さ れ、ヒト-蚊-ヒトの感染サイクルで効率よくウイルスが増幅されるためにアジア、 中南米で多くの患者が発生しておりその数は年間で数千万人と推計されている。デン グウイルスには未だ有効なワクチンがなく、また蚊の対策も行き詰まりを見せており 患者数・流行地域ともに増加・拡大傾向にある。今回はデングウイルス感染症を基礎 ・臨床の両側面から解説しデング流行地域の拡大の要因、デング出血熱の発生要因や デングワクチンの開発が困難を極めている理由について解説を加えて見たい。
2002年1月26日(土)
特別講演1:HAM発症の分子病理(14:00~14:50)
出雲周二(鹿児島大学医学部附属難治性ウイルス疾患研究センター分子病理・遺伝子疫学研究分野)
特別講演2:環境問題と地域づくり(14:50~15:40)
田中健次郎(鹿児島県環境技術協会)
シンポジウム1:奄美のハブ(16:00~17:40)
現状と問題点
服部正策(東京大学医科学研究所奄美病害動物研究施設)
ハブ毒腺アイソザイムの加速進化
大野素徳(崇城大学工学部応用生命科学科)
ハブ毒による出血と筋肉壊死(動物実験を中心に)
北野元生(鹿児島大学歯学部口腔病理学)
2002年1月27日(日)
シンポジウム2:南太平洋島嶼の諸問題(9:00~12:00)
ミクロネシアにおける思春期自殺と社会変化
Donald H. Rubinstein(鹿児島大学多島圏研究センター客員教授,Anthropology & Public Health, Micronesian Area Research Center, University
of Guam)
太平洋の島々におけるハンセン病
後藤正道(鹿児島大学医学部第2病理学)
西太平洋地域のデング熱・デング出血熱
森田公一(長崎大学熱帯医学研究所病原体解析部門分子構造解析分野)
ソロモン諸島のマラリア
石井 明(自治医科大学医動物学)
学生シンポジウム(13:00~15:00)
テーマ:フィールドワーク入門
熱帯医学を見つめる2時間