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2012年7月28日(土)国際島嶼教育研究センター特別研究会
15時〜16時半 総合教育研究棟5階

「フィジーにおける沿岸資源共同管理の課題−FLMMAとMPAに主眼をおいて−」

 鹿熊信一郎 (沖縄県)


[要旨]
  2003年と2005年に,フィジーの6つ漁村と西部離島における沿岸資源共同管理の状況を調査した。フィジーではFLMMAと呼ばれるネットワーク型沿岸資源管理プロジェクトが進展中である。FLMMAの特徴は,明確に示された管理区域があること,そして地域コミュニティが管理に重要な決定権を持ち参加していることである。政府水産局,南太平洋大学,NGOがリード機関となり,それぞれのFLMMAサイトでプロジェクトを推進している。サイトの一つ,ビチレブ島東岸のウドゥニヴァヌア村では,MPAの設定によりサルボウ類カイコソの資源がMPAの外でも増加した。ここでは資源管理の効果をコミュニティがモニタリングしている。バヌアレブ島北岸のササ村では,1990年にチーフの決定により始められた刺網禁止措置により自給漁業の資源は守られたが,現在は漁船数が少なく,もう少し手釣り・スピアー漁の漁獲圧を上げても持続していけると考えられる。ビチレブ島南東岸のキウバ村では,ナマコ漁業が盛んであり,今後,ナマコ資源の管理が課題となると思われる。バヌアレブ島の漁獲物と沖縄の漁獲物とでは魚種構成が似ており,魚価のグレードも似た傾向をもっていた。資源管理の代替収入源として,淡水魚養殖と中層浮魚礁が有望であると考えられる。現在,フィジーでは沿岸漁場・資源の所有権を政府からコミュニティに戻す動きがあり,今後のFLMMAの方向に大きく影響してくると考えられる。
  サンゴ礁生態系はサンゴ礁漁業を支える基盤である。しかし,今後,サンゴ礁生態系・生物多様性の保全とサンゴ礁漁業の振興との間に対立が生じる恐れがある。ここでは,フィジー・沖縄の事例を基に,仮に二つの考え方を「西欧型」・「アジア・太平洋型」と呼び,両者が対立するケースをMPA,サンゴ礁保全,エコツーリズムの課題をとおして考察する。MPAの面積を決める際には,できるだけ大きくしようとする西欧型の考え方と,操業区域を確保しようとするアジア・太平洋型の考え方のバランスをとるため,科学的調査によりスピルオーバー効果を定量的に把握すると同時に,参加型・順応的管理方式によりMPAの面積を決定・改善していくべきだと考えられる。サンゴ礁生態系再生の方向は,基本的には西欧型の考え方に基づく「保全」が第一であり,人為的な攪乱要因をできるだけ取り除かなければならない。しかし,サンゴ礁資源を漁業で利用しながら,人為的なサンゴ礁修復策もとり,サンゴ礁と人類が共存していけるサンゴ礁保全策も探していかなければならない。フィジーにおいては,環境収容力内,かつ,漁撈文化・魚食文化への悪影響を最小限にとどめたアジア・太平洋独自の発想に基づくエコツーリズムの進展が期待される。

キーワード:フィジー, FLMMA, MPA,水産資源管理,サンゴ礁保全,エコツーリズム



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