[要旨]
気候変動に関する政府間パネルは、小島嶼が気候変動の影響に対して非常に脆弱であることを認めている。人間の活動はこれらの影響を悪化させ、環境変化に対する島の適応能力を損なう恐れがある。本研究では、マレーシア・サバ州西海岸のトゥンク・アブドゥル・ラーマン公園(TARP)と東海岸のタートルアイランド公園(TIP)内にある、地理的に異なる2つの島の海岸線の脆弱性を調査した。マヌカン島(TARP)は大陸島であり、セリンガーン島(TIP)は岩礁島である。これらの島々は、生態学的な価値があり、重要な観光地やウミガメの生息地となっているため、社会経済的にも重要な意味を持っている。この研究は、地質学的、物理的環境要因から、海岸線の脆弱性を包括的に理解するものである。研究方法として海岸脆弱性指数(CVI)を使い、海岸の傾斜、岩相、地形、海面上昇、海岸線の変化率、潮位範囲、波高の7つの重要な変数を取り入れた。この研究では、海岸線を一様に扱うのではなく、特定の区間について脆弱性の詳細な評価を行う。侵食に対する回復力と脆弱性は、岩の多い崖と固まっていない砂地とで大きく異なるため、この違いは極めて重要となる。これにより、海岸線の異なるセクション間の回復力の違いを考慮した、より対象を絞った保全戦略を策定することができる。海岸線の各セクションには、それぞれの変数に基づいてスコアが割り当てられた。これらのスコアによって、海岸線は低、中、または高脆弱性ゾーンに分類された。その結果、セリンガーン島の海岸線はマヌカン島の海岸線よりも脆弱であることがわかった。この情報は、リスクの高い地域に合わせた管理方法を実施する上で極めて重要である。この研究は、環境変化に対する感受性の違いを明らかにすることで、島の海岸線を管理する上で、セクションごとの持続可能な戦略の重要性を強調している。また、気候変動の脅威が高まる中、島の保全に関する学術的な議論に貢献し、生態学的に重要で社会経済的にも重要なゾーンの責任ある管理の必要性を示している。
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