[要旨]
インドネシア・マルク州・セラム島の内陸部の高地にあるアビオ-アヒオロ村(西部セラム県エルパプティ郡)は、開発が遅れているとともに、公共的なサービスが十分に行き届いていない。アビオ-アヒオロ村までの道は舗装されていないため、二輪車や四輪車は通行できず、村への往来は歩行のみである。アビオ-アヒオロ村から舗装道路までは歩行で12時間かかるが、雨期には筏を利用することで、より短時間で目的地に到着できることもある。アビオ-アヒオロ村における聞き取り調査の結果、この村は食や栄養に関する独自の社会文化的および生態的なシステムを持つことが明らかとなった。村人はイモ類やトウモロコシを栽培し、乾期には天日で乾燥させる、雨期には燻製にすることで、イモ類・トウモロコシを保存食にし、必要なときに調理に用いて主食としている。アビオ-アヒオロ村は地元市場から非常に遠い場所に位置しているため、魚や市販の肉用若鶏が消費されることは稀である。村人は森で槍を使って野生動物(イノシシ、野鳥、シカ、クスクス、野鶏、ヘビ類など)を捕獲し食することでタンパク質を摂取している。肉類消費は地域の信仰とも深いかかわりがあり、例えば、来客には肉類と蒸留酒(
sopi)が提供されるべきで、村が地域の自然環境に適応していれば、それが可能になると考えられている。
図1:槍で野生動物を狩る
図2:獣肉を天日で乾燥させる
図3:イモ類を塩とチョロチョロで食べる
図4:雨期は獣肉を燻製にする
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