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国際島嶼教育研究センター特別研究会
日時:2019年3月4日(月)16時30分〜
場所:総合教育研究棟5階 国際島嶼教育研究センター会議室
「ハブの進化―毒タンパク質の加速進化―」
服部正策(東京大学医科学研究所奄美病害動物研究施設)
[要旨]
ハブ(Protobothrops flavoviridis)はトカラ列島南部から、奄美大島、徳之島、沖縄島とその周辺離島に生息するクサリヘビ科マムシ亜科に属する毒蛇である。アジアに生息するマムシ亜科の中では最大種で、体長2m、体重2kgに成長する。行動範囲も広いために、奄美大島と徳之島で1年に50件近いハブ咬症が発生している。
ハブが1回に放出する毒液は1mlもあり、多くのタンパク毒を含んでいる。その中で筋壊死活性を持つホスホリパーゼA2とそのアイソザイムには加速進化が確認されている。中でも、強い筋壊死活性を持つ塩基性アイソザイム3種はトカラ、奄美、徳之島のハブに特異的なもので、沖縄のハブには認められない。このように、中琉球の中でも島嶼別の違いが大きいことも他のヘビ類に見られない特徴である。島嶼別に認められる違いは、ハブ毒タンパク質の変異だけでなく、体色や外部形態、習性にまで及んでいる。これらの違いは中琉球の島々成立の地史を現在に伝えるものである。
世界自然遺産登録を目指す奄美大島、徳之島、沖縄島、西表島の生物多様性を特徴づける動物としてもハブとサキシマハブは重要な構成要素である。ハブは住民に被害を与える毒蛇であり、神様であり、生物資源の宝庫であり、観光資源でもある。今でも新しいことが次々と明らかになっているハブの現状を紹介する。
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