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2026年 研究会


国際島嶼教育研究センター第256回研究会

奄美大島のスモモ「花螺李」なぜ大和村ではスモモの栽培が受け入れられたのか?

香西直子(鹿児島大学農学部)・兼城糸絵(鹿児島大学法文学部)

2026年3月9日(月)16時30分 鹿児島大学 郡元キャンパス 総合教育研究棟5階

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[要旨]

スモモはバラ科サクラ属スモモ亜属に属する果樹である。日本ではニホンスモモが広く栽培されており、奄美のスモモである「花螺李」もその一種として位置付けられる。しかし「花螺李」は古くから奄美に存在していた果樹ではなく、1935年に台湾から導入された新しい果樹である。そのような新しい果樹であるにもかかわらず、「花螺李」はいまや地域を代表する特産物のひとつとなっている。

スモモの一般的な特性として、休眠性の落葉果樹であることや自家不和合性の品種が多いことがあげられる。特に、冬季に一定の低温を経験しないと発芽しないという性質を有しており、そのため比較的寒冷な地域で栽培されることが多い。日本におけるスモモの産地が山梨県や長野県であることは、スモモの生態的特徴と整合的である。

しかしながら、亜熱帯気候に位置する奄美大島においてスモモが安定して生育・結実している理由については、これまでほとんど調査されてこなかった。また、従来スモモ栽培が行われてこなかった地域において、スモモという「外来作物」が広く受容され定着した社会的背景についても検討されてきたとは言い難い。そこで、本発表では大和村で実施した現地調査の成果に基づきながら、「花螺李」が奄美に定着し得た要因について考察する。

図1.園地概観

図2.収穫直前の「花螺李」


国際島嶼教育研究センター第255回研究会

奄美大島宇検村における地域発信型観光の取り組み

新元一文(一般社団法人巡めぐる恵めぐる)

2026年2月16日(月)16時30分 鹿児島大学 郡元キャンパス 総合教育研究棟5階

[要旨]

本発表では、奄美大島宇検村で取り組んでいる「地域づくりを目的とした観光」の実践について紹介する。一般的な着地型観光は、旅行会社を介して商品化され販売される際に、市場ニーズに合わされることも多く、結果として本来表現したい地域固有の暮らしや文化が表層的にアトラクションとして消費されがちである。宇検村では、こうした課題意識のもと、観光客の要望に地域を合わせるのではなく、自然環境とともにある集落の暮らし、地域が大切にしてきた「環境文化」を軸にした体験型観光を展開している。

具体的には、地域住民自らが語り手・担い手となり、暮らしの中にある「足元の宝」を体験として提供する。集落がホストとなり受け皿を造る行程を経ることで、改めて地域への誇りを醸成するとともに、関係人口の創出につなげている。また、宇検村観光物産協会や株式会社元気の出る公社旅行(村内旅行社)、さらには島外の関連組織を連携させ、企画・募集・受入・案内・発信までを地域内で完結させる仕組みを構築することで、市場ニーズに過度に依存しない地域発信型の観光モデルを実施している。本発表では、これらの事例を通して、観光を経済効果だけでなく、地域を持続的に支える基盤として捉える可能性について考察する。


国際島嶼教育研究センター第254回研究会

龍郷町秋名のアラセツ行事に関する覚書

町 泰樹(鹿児島高専一般教育科)

2026年1月26日(月)16時30分 鹿児島大学 郡元キャンパス 総合教育研究棟5階

[要旨]

奄美大島龍郷町秋名では、旧暦8月の初丙の日に、ショチョガマと平瀬マンカイが行われる。ショチョガマは日の出前から明け方にかけて行われ、集落の田園地帯を望む山の中腹に建てられたショチョガマ(前方2本の支柱で支えられた片屋根の藁葺小屋)に稲魂を招き、男性たちがショチョガマの屋根を揺らしながら倒壊させる行事である。平瀬マンカイは、昼過ぎから夕方にかけて行われ、海岸にて男女らが向かい合う2つの岩の上で唄を掛け合い、海の彼方からやってくる稲魂を招く行事である。これらを合わせてアラセツ(新節)行事という。

本発表では、2025年9月に観察したアラセツ行事について報告し、先行研究を整理・引用しながらアラセツ行事がどのようなコスモロジーをもつ行事であるかを検討する。また、現在のアラセツ行事は、例えばショチョガマの設営に集落外の人手を頼りつつ、ショチョガマの屋根に集落外の人びとが乗ることができるなど、その一部を集落外に開放している。また、国指定の重要無形文化財に指定していることから、集落内外から人びとが集まる機会にもなっている。こうした現状を踏まえたうえで、観光資源としての側面や伝統文化の継承のあり方についても検討したい。