国際島嶼教育研究センター
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島嶼学概論I(島嶼学教育コース・コア科目)
講義内容

講義内容  ・三島村硫黄島講義

はじめに
 近年の学問の学際化・融合化により、幅広い分野の知識と柔軟な思考能力をもつ人材が社会で求められています。この要請に応えるため、鹿児島大学は大学院 を横断して体系的に履修するプログラム「島嶼学教育コース」を平成22年度10月に創設しました。島嶼学教育コースの目的は、「南西諸島からアジア・太平 洋島嶼域に関する様々な分野の授業科目を履修することにより、島嶼地域の要請に応え、国際島嶼社会でも活躍できる人材育成を目指す」にあります。プログラムの所定の単位を修得した学生には、各研究科の修士の学位に加えて、「島嶼学教育コース」修了証を授与します。
 このプログラムを開始するにあたり、コア科目「島嶼学概論I:総合島嶼学」および「島嶼学概論II:島嶼自然環境学」が新設されました。東南アジア島嶼部を含む南太平洋多島域は、文化的、自然的に連なるスペクトラムです。この多島域は大小様々な島々からなり、自然環境は変化に富み、人々の生活ぶりはその 自然および歴史に根ざした感化環境と深く結びついています。日本も太平洋に面し、多くの島々からなる島国で、南太平洋多島域と自然的,文化的に深く結びついています。鹿児島県は長崎県に次いで島の数が多く(605島)、南北600kmに28の有人島が広がっています。離島面積と離島人口は全国第1位で、有 数の離島県でもあります。これらの離島は、温暖で豊かな自然環境、伝統文化、郷土料理など個性に満ちた島々です。島嶼学概論I・IIでは、これらの多島域 の環境や資源を理解し、科学的に深い洞察力を養うことを目指しています。


島嶼学概論Iの特色
 島嶼学概論I(総合島嶼学)では、日本から太平洋に至る島々に関して人々の生活と社会の特徴や島嶼域の振興策について講義を行うだけではなく、三島村硫黄島においても講義をおこないます。三島村は竹島・硫黄島および黒島の3島と無人の新硫黄島や数個の岩礁から成り立っています。硫黄島は、3島の中心に位置し、周囲14.5km、面積11.7km2、椿、つつじ、車輪梅の原生林や、道路まで放し飼いの孔雀が散歩する、のどかな風景が見られる島です。畜産と漁業を主な産業とし、温泉や名所旧跡など豊富な資源を生かした観光も 盛んな島です。三島村を多面的に捉える機会を提供します(授業内容・取り組みが毎日新聞に掲載されました→こちら)。



講義内容
1:先史時代における島嶼環境とヒト(高宮広土 担当)
 皆さんは島の環境(島嶼環境)と聞いてどのような印象を思い浮かぶであろう。島(島嶼環境)はしばしば「南の楽園(eg. ハワイ、グアム、パラオ)」と喩えられるように今日まで多くの人々を魅了してきた空間である。皆さんはこの喩えに対して肯定的あるいは否定的な見解を抱くであろうか。つまり、ヒトにとって島(島嶼環境)は理想的な空間であったのであろうか、あるいはそうではなかったのか。
 ヒトの歴史を概観し、予告的に答えを先に述べると島(島嶼環境)は人類にとって決して楽園ではなかったようである。本講義では島嶼環境とヒトというテーマを人類史的に取り扱いたいと思う。そのためにはまず簡単に人類史(ヒトの進化)について説明し、ヒトの長い歴史(400?700万年)のなかでいつ頃ヒトが島嶼環境に進出(適応)したのかを紹介したい。人類史からみえることはヒト(Homo sapiens)という動物は多様な自然環境に対して大変適応能力の高い動物であることであるが、それほど適応能力の高いヒトでも島で生活を営むことはなかなかできなかった。つまり大陸と異なり、島(島嶼環境)はヒトにとって克服し難い自然環境の一つであった。それはなぜであろう。本講義ではその要因なども探っていきたいと思う。

キーワード:人類史、島嶼環境、Homo sapiens

2:島の作物・食文化(山本宗立 担当)
 隔絶した小島嶼においては、島内での食糧・薬・工芸作物の確保が非常に重要である。自然災害や社会変化によって、島外からの資源に長期間頼ることができない状況がよく発生するにも関わらず、輸入資源に依存した生活に変化した島が多い。フードセキュリティーの観点から、島嶼部における有用植物を知ることは非常に重要となる。
 そこで、まず島嶼部における作物の特徴を理解するために、私たちが日常食べている作物の起源地を学ぶとともに、島嶼部の「根菜農耕文化複合」を理解する。次に、植物(だけではなく生物)が資源としてどのように利用されているかを民族植物学的視点から学ぶ。そして、島嶼部における現地調査の写真を通して、その生き生きとしたおもしろさを肌で感じてもらうとともに、写真見て何を読み取ることができるのか、深い洞察力を養う。

キーワード:根菜農耕、栽培植物起源学、民族植物学

3:三島村硫黄島における講義
 定期船を利用して1泊2日(7月上旬予定)で現地調査学習を行います。
 [調査事前講義・準備] 地域資料(硫黄島は1集落1島であるので島単位データがそのまま調査に使える、またシマダスや三島村誌・町勢要覧等から抜粋したもの等)を配布して硫黄島概況についての総合学習を事前に行います。ホームページなどの得やすい情報は各自で準備する。この島は伝染病や医療面で特異な経験をしてきた場所でもあり、硫黄鉱山で栄えた歴史もある。自然面では天然記念物保存活動が近年活発であり、文化面でも国の無形文化財保存地区であり、小さな島における保存努力もなされている。近年ではアフリカ太鼓文化の交流的導入活動やヨットレース(三島カップ)受け入れ地として地域振興にも取り組んでいる。行政的にも島側に役場がない特殊な事情を抱えている。それらの事情の基本理解で、現地で学び調査する上での足元を固めます。各自の報告書は地元に還元するほか、ホームページ等での公開も予定しています。
 [現地調査および講義] 小さな島なので村役場の協力を得て島の主要個所を車と現地説明者随行で説明を受けつつ概観する。事前に、知りたい、あとでまとめたい内容についての質問事項などの準備が望ましい。訪問予定箇所希望(事前確認)も配慮する。
 [現地訪問及び現地説明] 飛行場・鹿児島市教育研修施設(元リゾート施設)・露天風呂所在地・産業遺産(鉱山跡地)・ジャンべスクール(宿泊予定地)・郷土歴史文化資料施設(俊寛堂・熊野神社展示資料・三島総合開発センター資料室)・三島小中学校・特産品加工施設(大名竹筍加工所)・牧場・観光施設(展望所)等です。
 [地元関係者レクチャー] 現地関係者の協力を得て、レクチャー並びに質疑応答できる場を設けます。 1・伝統文化継承などに関わる話 2. 産業史と現在の核になる産業である牧畜・漁業に関する話 3. 教育にかかわる取り組み 4ジャンべスクールや地域活性化に関わる話 5 その他(行政と関わるものについても対応できるように協力していただく予定です。)
 [各自自由行動調査] 出航までの時間を活用し、自由行動調査時間とします。

キーワード:地域理解、提言根拠、島嶼メリット





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