国際島嶼教育研究センター
トップページヘ 公開講座案内へ
島嶼研公開講座
『海底から見た鹿児島・琉球弧』
平成23年2月19日(土) 13:00-17:00
場所:共通教育棟1階211教室(鹿児島大学郡元キャンパス)
参加費:無料

・趣旨説明・要旨  ・当日の様子

島嶼研公開講座
海底から見た鹿児島琉球弧


 海底がいろいろな意味で近年注目を集めている。海底とその近辺の鉱物・エネルギー・生物等の諸資源の開発と利用、海底地形と陸上の生態系の関連性とその連続性・断続性、排他的経済水域の設定根拠や国防・国益的な問題も絡んでいる。それらは科学技術の粋を結集しての新発見と開発課題として次々明らかになっているものでもある。またそれゆえ、隣国や関係国との新しい調整課題をも生み始めている。それらに関連する海洋基本法の展開や低潮渚線(海水位が低い時に出る海岸線)の保全などの問題は、国境政策並びに離島振興の方向性にも新しい視座を加えつつある。それらの最前線の研究成果又は方法論、そしてその動向をわかりやすい解説することが今回の目的である。参加者との意見交換時間も確保し、その認識や理解を深めてみたい。


日時:平成23年2月19日(土) 13:00-17:00
場所:共通教育棟1階211教室(鹿児島大学郡元キャンパス)
参加費:無料
ポスター(PDF)


プログラム・要旨

13:00-13:30 「海底地形図を描く技術」 田口一夫(名誉教授・元水産学部)

【要旨】
 海図は、ある海域ごとの測点の水深をプロットしているが、測定は音響測深機と(今日では主として)電磁波精密測位によっている。しかし海洋作業を行うには、陸上の鳥瞰図のような海底地形のイメージ表現の方が、仕事の判断には好ましいから、海底地形を等深線で表現した海底地形図が刊行されている。この場合、測点間隔が広いと、描画者の主観によって描く等深線には誤差が生じる危険があった。1980年代以降ではマルチビーム測深機が導入されたので、この懸念はほとんど解消した。
 一方、位置測定の精度は進歩した電子航法技術と、機器の小型化などにより、天候による妨害を減少させた。したがって測深作業の稼働率が向上すると共に、海図の精度が向上したことを特記したい。
 ここでは測深・測位の基本についての理解を得るために、両者の原理に限定して解説する。しかし超音波測深機の技術的制約のため、測深精度の向上には限界があるので、デジタル測定値の充分な吟味の必要なことを力説した。また測位手段としてはGPS測位のみを述べるが、その誤差改善のための補助システムも要約した。なお国際的な衛星測位システムの運用に、わが国が全く関与していないことを留意すべきである。

13:30-14:00 「宇宙と海底から見た南の島々」 木下紀正(名誉教授・元教育学部)

【要旨】
 鹿児島湾を出て種子島・屋久島を左手に見ながら南下すると、この1万年で日本最大の海中大噴火を起こした俊寛伝説の島があります。さらに秘湯に恵まれた活火山の島々が続き、中には桜島を抜く噴火活動も見られ、無人島になった所もあります。やがて鮮やかなサンゴ礁に縁取られた島々が現れ、奄美・沖縄、更に先島諸島へと連なっています。これらの島々を、宇宙から見た選りすぐりの画像データと地上・海底地形図を用いた3Dパノラマによってご案内します。

14:00-14:10 休憩

14:10-14:40 「琉球弧の海岸段丘と海面変化,隆起」 森脇 広(法文学部)

【要旨】
 海岸段丘は,海岸地域において段丘崖によって区切られた階段状に広がる平坦な地形である.琉球弧(南西諸島)の島々は海岸段丘が広く分布していることから,人々の生活と深く関わり,南西諸島を大きく特徴づける景観をなしている.この講座では,海岸段丘からどのような海岸環境変化を読むことができるかを解説する.
 海岸段丘の平坦面は,海の作用によって侵食されてできた波食棚・海食台や堆積してできた三角州,サンゴ礁などの平坦な地形からなる.奄美大島より南では隆起サンゴ礁によって作られている.これより北の屋久島・種子島は主に侵食によってできた平坦面からなる.したがって,段丘面は過去の海面の位置を記録している.南西諸島の島々には海岸段丘が何段もあり,階段状に過去の海面が離水してきたことがわかる.日本の標式的な海岸段丘分布地域の一つとされる種子島は10段ほどの海岸段丘面が認められている.それらは大きく低位と中位,高位の3群に分けられている.このような段丘面はどのような環境下で形成され,この知見からどのようなことがわかるのであろうか.
 過去において海面は,最大100m以上の規模で上下に繰り返し変化してきた.海岸段丘面はこうした上下の海面変化のうち,上昇がピークに達した高海面期に作られたことがわかっている.したがって,何段もの段丘面は過去の何回かの高海面期の海面位置を示していることになるので,ある高さにある段丘面は,その位置から海面が低下したか,過去にこの高さより下の方にあった海面で作られた平坦面が隆起したかによって作られたことになる.海面変化の研究によると,何回もの高海面期の海面は現在とほぼ同じかこれよりも低い位置にあったことがわかっている.よって,海岸段丘面は,高海面期に平坦化された面が隆起して作られたことになり,海岸段丘の存在はその地域が隆起地域であることを示す.
 ある海岸段丘面の年代と現在の高さがわかると,その場所の隆起の規模がわかることになる.また,数段の段丘面についてこれがわかると,隆起の歴史がわかる.これまでの海岸段丘面の研究では,等しい速さで隆起したことがわかっている.さらに,こうした段丘面が広く追跡されると,地殻変動の地域性がわかることになる.海面変化は世界にほぼ共通して生じているから,この変動の様子は汎世界的に追跡できることになる.もっともよく追跡されている海岸段丘面は,12万5000年前に作られた平坦面である.なぜか.講座で解説する.喜界島はこの面が海抜200mにあり,日本ではもっとも隆起の大きい地域として知られている.

14:40-15:10 「琉球弧の生物多様性」 岡野隆宏(教育センター・前環境省)

【要旨】
 琉球弧の島々には、奄美大島・徳之島のアマミノクロウサギ、沖縄北部のヤンバルクイナ、西表島のイリオモテヤマネコなど代表されるように、一連の島のつながりでありながら、島ごとに異なる生物、しかも世界中でその島にしかいない生物がたくさん見られます。これは、地殻変動や気候変動による海水面の上下により、ユーラシア大陸との分離・結合が繰り返され、島に隔離された陸生の生物が、独自に進化し、あるいは他の島では絶滅するなどによって、島ごとに異なる生態系が形成されたからだと考えられています。
 このような点が評価され、2003年に学識経験者からなる「世界自然遺産候補地に関する検討会」(環境省と林野庁が共同で設置)において、トカラ列島以南の南西諸島(検討会においては「琉球諸島」の表記を使用)が、知床(2005年登録)、小笠原諸島(2010年推薦)と並んで世界自然遺産の候補地に選定されました。
 今回は、琉球弧の多様な生物を紹介するとともに、最近の研究成果からその生物が辿ってきた歴史を振り返ってみたいと思います。

15:30-17:00 特別講演「海洋新法と海底をめぐる権利・資源・紛争」 山田吉彦(東海大学海洋学部海洋文明学科)




連絡先
国際島嶼教育研究センター: TEL: 099-285-7391, e-mail: shimaken@cpi.kagoshima-u.ac.jp

会場地図




案内ポスター(pdf



当日の様子はこちら





Webmaster: YAMAMOTO Sota sotayamacpi.kagoshima-u.ac.jp
(c) Copyright KURCPI