鹿児島大学島嶼教育研究センターでは、これまで島に関する多くのプロジェクトを実施してきました。2002〜2004年には与論島を中心とした南西諸島でプロジェクト「多島域における小島嶼の自律性」を実施しました。与論島で調査を実施するなかで、与論島を教育の場として活用できるのではないかとの発想に至りました。島嶼教育研究センターは共通教育で、「南太平洋多島域」を開講しています。講義では写真やビデオを用いて、わが国の南西諸島を含む太平洋地域の諸問題について講義を行っています。しかし、島に関する知識や体験が少ない学生にとって、これらの講義を聞くだけでは、島を身近なものとして感じるには限界があります。講義では受講生が離島に関心を持ち、実際に島を訪れてくれることを期待して講義を行っていることから、島に出かける機会を提供することを目的として、与論島での集中講義「島のしくみ」を企画しました。
与論島には町立診療所がありましたが、民間の医療機関の充実などの理由で平成14年4月に閉鎖され、その施設の有効利用が検討されていました。与論町は鹿児島大学に研究施設としての利用を要望し、平成18年に2月に施設活用に関する協定書を交し、鹿児島大学与論活性化センターとなりました。施設の公式な開所の前ではありましたが、平成17年度から利用が可能であったことから、集中講義「島のしくみ」は平成17年度から開講されました。
国際島嶼教育研究センターが企画した集中講義「島のしくみ」は、学外の非常勤講師に鹿児島大学で講義をしてもらうということから、さらに一歩進め、フィールドとしての島(アイランドキャンパス)で、島で活動している非常勤講師に島で講義を実施してもらい、それを集中講義の単位として認定しようというものです。
この集中講義は与論島に出かけて実施し、日程は定期船を使い、船中2泊と与論島3泊の5泊6日です。集中講義では与論町における行政、文化、観光、農業、漁業の現在と今後について与論島の経験豊かな実務者の講義と現場の視察を行っています。学習目標は以下の5項目です (1) 与論島の特性を理解する、(2) 与論島で実施されている企画や試みについて学ぶ、(3) 与論島をはじめとする離島の状況について理解を深める、(4) 島嶼域の振興施策について学ぶ、それに (5) 自分が居住している地域についても関心を深める。