国際島嶼教育研究センター
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島フィールド学の蓄積・展示・展開
日時:平成2532日(土)  1300 1700
場所:鹿児島大学稲盛会館

参加費:無料

案内ページ   ・当日の様子

  平成25年3月2日(土)に鹿児島大学国際島嶼教育研究センター・鹿児島大学総合研究博物館主催でシンポジウム『島フィールド学の蓄積・展示・展開』が開催されました。当日は多数の方に御参加いただき、盛会となりました。

島嶼研シンポの案内ポスター(jpeg

●プログラム

13:00 挨拶

13:05 基調講演
    「カヌーと伝統的航海術―オセアニアの資料の展示と公開―」
        ●須藤健一(国立民族物博物館)
  • 【要旨】
     オセアニアで島嶼間航海や漁撈活動を担ってきたカヌーと航海術は20世紀にほぼ消滅した。しかし、その伝統の知と技を今に伝えてきた島があり、ミクロネシアのサタワル島である。サタワルの航海術は、ハワイなどポリネシアの航海術の復元と創造をもたらした。
     民博では、1970年代からサタワルで伝統文化の調査研究と民族資料の収集を行い、その保存、展示および公開につとめてきた。それは、①カヌーの建造過程の調査、記録化と収集・展示、②カヌーと航海術の映像撮影、編集、ビデオテーク公開、③航海の神話・伝説などの口頭伝承の採録、文字化と日本語・英語への翻訳といった内容である。②、③の成果は現地へ還元し教育に役立てている。
      現在、本館では収集・整理・保存している映像音響や記録情報などの資料を現地還元し、現地の文化の活性化や多世代間の文化伝承に役立てる具体策を練っている。


13:45 休憩

14:00 シンポジウム
    「インドネシアにおけるフィールドワーク,島々に未知のアリを求めて」
        ●山根正気(鹿児島大学総合研究博物館)
  • 【要旨】
     インドネシアはアジア熱帯に位置し、大小1万8千を越す島々からなり東西の距離は5,110km におよぶ。面積の半分以上を占めるスマトラ・カリマンタン・ジャワは,マレーシアとともにスンダランド地域と呼ばれており、共通した生物相をもつ。東端のパプア州の生物相はオーストラリア的要素をもつが、同時にマレー系の種も多数生息し、また固有性が高い。スンダランドとパプアの間は生物相の移行地帯でワラセアと呼ばれる。インドネシアのアリ相は19世紀の中葉から調べられ、多数の属や種が記載・記録されてきたが、地理的広がりがあまりに大きいため、未だ正確な種数は判明していない。演者は1982年からインドネシア産アリ類の分類と生物地理を研究して来た。今回は、インドネシアにおけるアリの分布の概要、クラカタウ諸島におけるアリの再移住プロセス、アリ研究者ネットワーク、標本の安全な保管庫としての博物館の役割について紹介する。


14:20 「島フィールド学の蓄積とデータベースネットワーク構築」
        ●河合 渓(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)
  • 【要旨】
     島は海に囲まれ、狭隘性、脆弱性という特徴を持ち、そこには独自の自然、文化、社会経済システムが存在しており、「島はひとつの世界」と捉えることができる。また、島は様々な環境変動の影響を強く迅速に受ける地域であるため、「島は世界の縮図」とも考えられる。つまり、世界が抱える様々な環境変動に対する影響を推察し、その適応策を提言する場所として、「島嶼」域は最適な地域といえる。
     一般に、フィールド研究の結果、文献、写真、サンプル、位置情報などの成果を得ることができる。これらをデータベース化することで、情報を整理し、他研究者との情報共有ができ、簡単にデーターの比較を行う事ができる。特に島においては小さな単位で情報をまとめることが可能なため、島単位での情報比較をすることが可能である。
     現在、国際島嶼教育研究センターでは鹿児島県島嶼域とミクロネシアで研究を行っている。ここにみられる地理的影響もデータベースを用い島単位で比較することで、様々な影響を簡単に考察することができる。本報告ではこの様なデータベースをつかった発展的な利用とデータベース作成の困難さについて考察を行う。


14:40 「島の活性化とともに生まれた口永良部島歴史資料館」
        ●宇都 修(屋久島町立金岳中学校)
  • 【要旨】
     口永良部島は、屋久島の北西約12kmに位置し、屋久島国立公園に属している。面積35.8k㎡、周囲49.7kmで、ひょうたん型をしており、南東部中央には昭和41年に大爆発を起こした「新岳(657m)」が、今なお噴気をあげている。「口永良部島歴史資料館」は島で唯一の金岳中学校内にあり、口永良部島の文化と歴史が集約されている。資料館が完成したのは、平成9年3月。過疎化と高齢化が進む中、貴重な資料を埋もれさせてはならないとの思いから、当時の金岳中学校木原常義教頭と畠盛杉さんを長とする高齢者学級が立ち上がったのが資料館整備の始まりである。常日頃から口永良部島に残る石器や土器、農業・林業関係の用具、昔話や火山爆発の歴史書などの情報収集に努め、週末を中心に協力依頼に奔走した。当時の上屋久町教育委員会(現 屋久島町教育委員会)の協力も得て整備された資料館は、今でも島を訪れる人々の学舎となっている。


15:00 「島に出かける博物館」
        ●金井賢一(鹿児島県立博物館)
  • 【要旨】
     鹿児島県立博物館は、1995年から移動博物館を実施している。これは自然史系博物館から遠い地域の方々に、本物にふれる機会を増やしてもらいたいという目的で始められた。この事業は5年ごとに見直されており、その実施内容も次第に変化しているので、ここでは2012年11月に喜界町で行った移動博物館を例に説明したい。
     今回は展示、楽しい実験、自然紹介授業、自然観察会、星空観察会、自然講演会という内容を実施した。特に自然講演会では普段意識することの少ない喜界島の自然を紹介するため講師を招聘したほか、中・高生による「喜界島に侵入する昆虫に関する研究」についてポスター発表を行う機会も作った。この研究は学芸主事が5月、7月と喜界島を訪れ、研究内容の方針決定や実際の調査についての助言や支援などを行ってきた。
     移動博物館の抱える課題として「費用の確保」「一過性になりやすい」などが挙げられるが、一つでも多くの地域に出かけられるように工夫しながら子どもたちに感動を届けられるように努力していきたい。


15:20 休憩

15:35-17:00 総合討論


●展示ポスター
  • 「はかない島、新島の誕生とその後」
         ●鹿野和彦(鹿児島大学総合研究博物館)

    「調査地に研究をひらく展示実践―Sanggar Penelitian Sirope(ジュズダマ研究スタジオ)―」
         ●落合雪野(鹿児島大学総合研究博物館)・上まりこ(展示デザイナー)
           ・アグネス・ランピセラ(ハサヌディン大学農学部)

    「鹿児島県島嶼域における魚類多様性調査と証拠標本・資料の蓄積」
         ●本村浩之(鹿児島大学総合研究博物館)

    「三島,トカラにおける外来アリ」
         ●福元しげ子(鹿児島大学総合研究博物館)

    「鹿大に建つ奄美の高倉」
         ●橋本達也(鹿児島大学総合研究博物館)

    「鹿児島大学国際島嶼教育研究センター平成24年度活動報告及び既往年度調査概要」
         ●鹿児島大学国際島嶼教育研究センター



●当日の様子

基調講演(須藤健一先生)

シンポジウム開始(山根正気先生)

シンポジウム(河合 渓先生)

シンポジウム(宇都 修先生)

シンポジウム(金井賢一先生)

総合討論

ポスターセッション ポスターセッション



●問い合わせ先
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター  〒890-8580 鹿児島市郡元1-21-24
電話099-285-7394  FAX099-285-6197  E-mail: shimaken@cpi.kagoshima-u.ac.jp





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