国際島嶼教育研究センター
トップページヘ
研究会などの記録 
2001年(多島研)

  • 多島圏研究センター移転記念行事のご案内
    開催日: 平成13年11月30日(金)

    1. 多島圏研究センター施設公開

     公開時刻: 14時30分より15時30分まで
     場  所: 法文学部北側、総合教育研究棟5階
    2. ミクロネシア連邦調査隊写真展
     開催時刻: 14時30分より
     写真展会場: 総合教育研究棟5階多目的ホール(多島圏研究センターフロアー)
    3. 移転記念特別講演会「多島域のネットワーク」
     開催時刻: 15時30分より17時30分まで
     開催会場: 総合教育研究棟203号講義室

     講演者と演題ならびに要旨:

    ・Rubinstein, Donald H.(多島圏研究センター)
    “And We Remain, Suffering”―歌に表われたミクロネシアの戦時史
    [要旨] アメリカ、ヨーロッパ、アジアでは、太平洋戦争主導者間で辟易する程の量の歴史叙述が生み出された。けれども、戦争により太平洋諸島民にふりかかった歴史的な体験は最近まで、外界の学者にはわからなかった。わからなかったのは、ある程度太平洋諸島民の歴史の本質から来ている。つまり、そうしたものは、本とか論文に書き残されるよりも、歌や踊り、あるいは口承で伝えられることの方が多いからである。今回の講演で私は、戦時中のファイス島民の体験を考察し、長い叙事歌の形式を取る島民史の実例を述べることにする。その歌は、今日でも引き続き島での踊りの行事の際、くり返し聞かれるものである。戦時事業のためにヤップ島へ徴用された男達と島に残った男達の双方がいたのであるが、歌は、ファイス島の人々の大変局地的な見方から戦争に関する思いを記録している。つまりそれは、歴史的な事情を伝えてくれることに加え、島民の間の衝撃と苦難の感覚を劇的に具現しており、また、戦争という出来事に対する島民の感情的な反応としての反抗、怒り、ユーモアが複雑に混ざり合ったあるものを表現している。それはまた、創造的表現様式の内、ことばによる芸術的能力と詩的構成を例示するものでもある。 (この要旨の原文は英語)

    ・柄木田 康之(宇都宮大学国際学部、元南太平洋海域研究センター)
    島嶼をつなぐライフ・ヒストリーと親族ネットワーク
    ―ヤップ州離島の近代への適応戦略―

    [要旨]  人口移動研究において,世帯戦略アプローチに加え,ライフ・ヒストリーに注目することで,意思決定モデルと世界システム論という対立したアプローチを媒介することを提唱する。ヤップ州離島で,人々が最も頻繁に移動する契機は,自身あるいは近親者の就学,妊娠,病気の機会である。移動のライフ・ヒストリーからは,公的教育とそれに続く公的雇用にもとづく長期的還流と,医療,親族訪問にもとづく短期的還流という二つのパターンを指摘することができる。人々の移動のパターンは,援助にもとづくヤップ州の教育,医療,公的雇用を核とした社会経済発展を強く反映している。

    ・早瀬晋三(大阪市立大学大学院文学研究科、元本学教養部)
    海域東南アジア東部の歴史地理的世界
    ―マレー世界と太平洋世界を結ぶ世界―

    [要旨]  海域東南アジア東部世界では、15世紀ごろから本格化する「商業の時代」とともに、イスラームとリンガ・フランカとしてのマレー語が広まり、マレー世界が東部にも拡大したと理解されてきた。その結果、マレー世界に繰り込まれた東部の独自性は軽視されてきた。東部へのマレー世界の拡大は、換言すれば、それまで支配的だった太平洋世界の要素が薄れ、マレー世界の要素が強くなったということができるだろう。しかし、太平洋世界との関係を歴史的に語るには、あまりにも資料が少ない。まずは、海域東南アジア世界の理解と、太平洋世界との関係を物語る遺物から考察をはじめてみよう。
  • 2001年9月17日(月)第27回多島研センター研究会
    山下欣一(鹿児島国際大学
    奄美のアイデンティティをめぐって ―同化と異化の狭間で―
    16時30分 多島圏研究センター会議室

    [要旨]わが国九州と台湾の海洋上に散在する島々のうち、その中央部に位置するのが奄美諸島である。北には、波荒きトカラ海峡を境に喜界島、順次南へ奄美大島・徳之島・沖永良部島と連なり、沖縄本島とは指呼の間に与論島がある。これらの島々を被覆した歴史の流れは、悲惨というべきで、1609年の薩摩藩・島津氏の琉球征伐により、奄美諸島は、島津氏の直轄地になり、それまでの琉球王府から分離されたのであり、このことは1868年の明治維新において、決定的な影響を与えた。琉球王府関係と比較し、奄美諸島は、なんの配慮もなされずに日本化が実施され、それは様々な矛盾を生んだ。奄美諸島の人々の考え方と行動を事例に即し考えてみたい。

  • 2001年7月23日(月)第26回多島研センター研究会
    大野素徳(崇城大学工学部応用生命科学科
    ヘビ毒腺アイソザイムの加速進化及び地域特異的進化
    16時30分 多島圏研究センター会議室

    [要旨]  ハブ毒のホスホリパーゼA2(PLA2)アイソザイムは、それぞれが特有の生理活性をもっていた。これらの遺伝子は4個のエクソンと3個のイントロンよりなる。遺伝子は非翻訳領域より成熟タンパク質領域において変異(塩基置換)が多いことなど、通常(中立)遺伝子とは逆の性質をもっていた。遺伝子対について各領域の座位あたりの塩基置換数を計算すると、これらの遺伝子が加速進化してきたことを示した。中立遺伝子との比較から、PLA2アイソザイム遺伝子はエキソンが加速的に進化してきたものであった。これらの多様な生理機能は加速進化により獲得されたものと考えられた。ほかのヘビアイソザイム遺伝子も加速進化をしてきたことがわかり、加速進化はヘビ毒腺アイソザイム系に普遍的である。
     奄美大島、徳之島、沖縄のハブは100-200万年間孤立してきた。沖縄ハブ毒のみ筋壊死活性が強いPLA2アイソザイム2種が偽遺伝子となり発現していなかった。沖縄ハブは、その食性(ホルストガエル)から強い毒性を必要とせず、活性が強い遺伝子を適応的に不活性化したものと考えられる。

  • 2001年6月25日(月)第25回多島研センター研究会
    Donald H. Rubinstein(鹿児島大学多島圏研究センター
    ミクロネシアの芸術を読む
    16時30分 多島圏研究センター会議室

    [要旨]  ミクロネシアの芸術は、周辺状況との関連を密にしながら、また、象徴的な形を取りながらその意味するところを伝える。今回の発表では、体の装飾、建築、彫刻、織物といったミクロネシアの芸術の幾つかの実例を検討し、これら芸術の文化的意義を“読む”方法を示唆したい。発表では、ミクロネシアの芸術の解釈への二つの接近方法を解説する。その一つは、儀礼的な意味合いと特定の芸術の機能が対象への価値をどのように告げるかについての考察にかかわるものである。第二の接近法として、デザインと形式それ自身の象徴的または構造的解析を提示するが、デザインは、空間的また社会的関係の文化的な言語の部分として“読解”されるかも知れないというふうに示唆する。

  • 2001年5月26日(土)第24回 多島圏研究センター研究会

    平成12年度総合研究プロジェクト「多島域における小島嶼の自律性」研究成果報告会  (プログラム
    9時-15時20分 鹿児島大学連合大学院農学研究科棟 3階会議室
  • 2001年4月23日(火)第23回 多島圏研究センター研究会

    河合 渓(鹿児島大学多島圏研究センター
    海産巻貝の摂餌戦略
    16時30分 多島圏研究センター会議室

    [要旨]  海産巻貝であるチヂミボラ類は主に北方域の岩礁域潮間帯に生息し、固着性の二枚貝やフジツボを摂餌する捕食者です。北大西洋に分布するヨーロッパチヂミボラにおいては室内実験の結果から餌サイズの選択性は最適摂餌戦略で説明され、サイズの大きなものが理論上最適な餌であることが示されています。しかし、実際の生息環境においては室内とは異なる多くの環境要因(波当たり、乾燥、捕食者、etc)を考慮しなくてはいけません。今回の発表ではこれまでに報告されているチヂミボラ類の餌選択性について簡単に説明した後、日本に生息するチヂミボラの餌選択性について報告します。この実験では野外と室内における餌種と餌サイズ選択性の季節変化を観察しました。最後に環境要因がどの様に影響するかについて考察を行います。

  • 2001年3月13日(火)第22回 多島圏研究センター研究会
    中島 秀喜 (鹿児島大学歯学部口腔細菌学)
    エイズ治療薬の研究(Study for AIDS Drugs)
    16時30分 多島圏研究センター会議室

    [要旨]
     エイズの原因であるヒト免疫不全ウイル(HIV)が発見されて以来、その感染・増殖機構に関する研究は飛躍的に進歩し、抗HIV活性を示す逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤が開発され、それらを併用するhighly active anti-retroviral therapy (HAART) により患者の QOL は向上した。しかしながら、これらの薬剤ではウイルスを完全に排除することは不可能であり、薬剤耐性ウイルスの出現や治療コストも問題となっており、新規の作用機序を持つ薬剤の開発が切望されている。HIV増殖過程の最初の段階、すなわち細胞表面への吸着には宿主細胞上の CD4分子がそのレセプターとなることが知られていたが、近年、CXCR4 や CCR5 などケモカインレセプターがコレセプターとして作用することが明らかにされた。我々は、カブトガニの血液細胞に含まれる抗微生物ポリペプチドであるポリフェムシン・をリード化合物とした、T22 やT134、T140 という抗HIVポリペプチドを合成し、CXCR4 アンタゴニストとして作用することを見いだした。その他にもバイサイクラム AMD3100 やD型アルギニンのポリマーALX40-4C などの低分子化合物が CXCR4に作用して HIV感染を阻止することが報告されている。これらの低分子物質は、HIV感染のコレセプターをターゲットとした新規エイズ治療薬の有力な候補として考えられている。ここでは、エイズ治療薬開発の現状として、現在使用されている抗HIV薬の有効性と問題点をあげ、新しい作用機序を持つ抗HIV物質の可能性について述べてみる。また、マングローブ抽出多糖体や植物ポリフェノールの抗HIV作用や抗酸化作用に関する研究成果も報告し、天然物由来の薬理活性物質の可能性についても述べてみる。

  • 2001年2月19日(月)第3回 ”多島域における小島嶼の自立性”コロキウム
    富永茂人(鹿大農学部
    「鹿児島県島嶼域の果樹農業」
    脇門敏治( 鹿児島県農業コンサルタント協会)
    「和泊町の農業発展を探る-花き類を中心に-」
    16時30分 多島圏研究センター会議室
  • 2001年2月5日(月)第21回多島研センター研究会

    Jean Louis Rallu (イーストウェストセンター、ハワイ)
    Population and Social Change in New Caledonia Following the Matignon Agreements
    (マティニョン協定に続くニューカレドニアにおける人口と社会変化)
    16時30分 多島圏研究センター会議室
    [要旨]
     1988年のマティニョン協定は、地域間と社会的集団間の不平等を是正することで、1998年のニューカレドニア自治を用意するものであった。不平等是正の進行状況評価が1989年と1996年の国勢調査データを用いてなされた。その向上はカナカの人々の保健、教育、雇用、権限ごとに大変な違いがあった。フランス本国よりの多数の移住に続いて協定と結びついた金の流入があり、その結果各部門間の不均衡が目立つようになった。要するに、経済的ならびに社会的不均衡は人口的な不均衡より、是正するのにはるかに困難なようである。
    (この発表要旨の提出原文は英語)
    付記:当日の発表は英語で行ないますが、補助通訳がつきます。
  • 2001年1月15日(月)第2回 ”多島域における小島嶼の自立性”コロキウム
    若林良和(高知大学
    漁業開発と人材育成-ソロモン諸島の日系合弁事業を事例として
    上田不二夫(沖縄大学
    沖縄、水産振興の現状と課題
    16時30分 多島圏研究センター会議室





Webmaster: YAMAMOTO Sota sotayamacpi.kagoshima-u.ac.jp
(c) Copyright KURCPI