国際島嶼教育研究センター
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海と陸のはざまでの「場所の力」―南九州と南の島々からの視座― 

公開シンポジウム
海と陸のはざまでの「場所の力」―南九州と南の島々からの視座―
プログラム
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共催:鹿児島大学多島圏研究センター・日本地理学会

この公開シンポジウムは「多島域フォーラム:島に生きる」の一部です

日時:2000年10月8日(日)(9時30分-16時30分)
場所:鹿児島大学稲盛会館ホール

どなたでもご自由に参加いただけます。入場無料。

オーガナイザー:堀 信行(東京都立大学理学部)、中野和敬(鹿児島大学多島研)、石村満宏(鹿児島大学法文学部
座長:石村満宏・中野和敬

  9:30-9:50 責任者 趣旨説明 海と陸とのはざまにある南九州を視野に入れた南の多島域には、歴史的に醸成されてきた自律的な「場所の力」と呼べるものが存在しているように思われる。場所の力は、場所に結びつく人びとのアイデンティティにもつながる眼差しに支えられ、社会・経済的あるいは民俗・文化的な性格を持っている。そしてこの場所の力は、内へ向かう凝集力と外へ向かう展開力という相反するベクトルの場で発生する渦のようなもので形成・維持されていると考えられる。内に向かうベクトルを持った凝集力は、たとえば地域社会の結合関係が強化される諸現象や、あるいは自然の環境利用や土地利用を介して生じる自然と人間との関係性が深化する過程などでみることができよう。一方、外に向かうベクトルを持った展開力は、たとえば奄美・沖縄をはじめ南太平洋も含む南の島々への眼差しと反対の南の島々からの眼差しによって展開されてきた交流過程や、九州本土あるいは日本の中央を意識した眼差しによって展開された諸現象にみることができよう。このテーマは、なにも南九州や南の島々だけに特異なものではなく、どの地域にも共通するもので、場所の現在を活写する地理学的な一つの試みである。
s101 9:50-10:25 大城直樹(神戸大学文学部 「場所の力」の理解にむけて―方法論的整理の試み 研究概念としての「場所」という術語は、地理学においていつ頃から登場し、どのような意味や意義を有し、また今後どのような展開をみせるのだろうか、この点について、理論的・方法論的な整理を行うのが本報告の目的である。特定の土地に生きる人間および社会集団の姿を、その経験的な局面から理解しようとする人文主義地理学の潮流から生まれたこの概念が、その後どのように受容され批判されてきたかを再検討してみたい。
s102 10:25-11:00 永迫俊郎(東京都立大学理学部・院) 火山地域・南九州の地形環境―「場所の力」醸成にかかわる自然 南九州には火山フロント沿いに巨大カルデラと後カルデラ火山が連なり、シラス台地をはじめ火砕流台地が広く分布し、火山灰が一円を覆っている。南九州はまさしく火山地域であり、自然環境に限らず風土や地域性について論じるうえでも火山を軸とする切り口は重要である。本発表では、まず主に流砂系地形発達史の観点から南九州の地形環境の整理を行い、さらに火山と人間の関わりを示す様々な事例を通して「場所の力」の描出に迫る。
s103 11:00-11:35 久保田康裕(鹿児島大学教育学部 南西諸島における植生分布と多様性のダイナミズム―亜熱帯の再生と保全を考える― 現在地球上の様々な地域で、森林群集の取り扱いを巡る議論が社会問題化している。しかしこの問いに対して十分納得できる解答は見出されていない。この問題で考えなくてはならないポイントは、生物群集である森林を、私達の社会にどのように位置付けて共存していくのか、ということである。今回の発表では、南西諸島における森林群集の特徴を解説し、現在問題となっている沖縄本島ヤンバルにおける米軍演習地の森林の保全問題にも触れる。
休憩 11:35-12:50      
s104 12:50-13:25 植村哲(鹿児島県離島振興課 鹿児島の島人(しまびと)は島を誇れるか?―21世紀の離島振興に向けての鹿児島からの一考察― 本土からの遠さゆえ「離島」としての格差是正策が講じられてきた鹿児島の島々。しかし、道路・港湾の整備など「便利な生活」の実現と裏はらに過疎化が進む一方で、島の素朴な自然の良さが見直されるなど、従来の単なる格差是正論とは異なる離島振興の視点が提唱されている。21世紀の島おこしを巡る島と都会との「愛憎半ばする感情」を解決するには、まずは島人(しまびと)が自らの島を誇りに思い、その存在をアピールすることが重要ではないだろうか。
s105 13:25-14:00 田島康弘(鹿児島大学教育学部 奄美における人口移動と「場所の力」 都市部を中心として日本の各地に移動した奄美の人々は、その移住先で「郷友会」といわれる「むら」を再生し、移住先での生活に組み込まれながら、出身地につながる独自性を保持し続けている。こうした傾向は海外へ移住した奄美の人々の間でも同様に見られる。これらの現象は、奄美の人々の間での「凝集力」と「展開力」とを示しており、いずれも、奄美という地域が持つ「場所の力」の現われと言えよう。
s106 14:00-14:35 水内俊雄(大阪市立大学文学部 大阪市における沖縄出身者のまち―集住・差別・まちづくり― 関西地方には、沖縄出身者の集住地区が多いことは周知のことであるが、最大の集住地である大阪市大正区において、その集住地が戦後大きく移動し、かつそこでは既に非常にエスタブリッシュされた県人会の存在、二世・三世の沖縄文化の自由な継承と創造、そして沖縄をキーワードにしたまちづくりの鼓動と、さまざまなうごめきがここ十数年見られている。こうした動きの原点が沖縄復帰の1970年前後であり、そこで集住地区の移動を伴なう「スラム」クリアランスの事例をもとにして、その運動のメカニズムを明らかにしたい。
休憩 14:35-14:50      
全体討論 14:50-16:30      






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