国際島嶼教育研究センター
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鹿児島大学重点領域研究(島嶼)シンポジウム
「島の魚と私たちのこれから―鹿児島県島嶼域における魚類の多様性と持続的な利用へ向けた取り組み―」
日時:平成27月11月28日(土)13時30分~17時
会場:鹿児島大学共通教育棟2号館1階211号
参加費:無料

案内ページ   ・当日の様子

  平成27年11月28日(土)に鹿児島大学重点領域研究(島嶼)シンポジウム「島の魚と私たちのこれから―鹿児島県島嶼域における魚類の多様性と持続的な利用へ向けた取り組み―」を開催いたしました。当日は多数の皆様方に御参加いただき、盛会となりました。


●趣旨
  南北600kmに及ぶ鹿児島県には、島嶼域を中心に多様な魚類が生息しており、島嶼域ごとで固有な魚類相や希少種の生態等が近年の研究で明らかになっています。一方で、魚類は重要な食料資源であり、四方を海に囲まれた島嶼域では基幹産業のひとつを担っています。近年では、マグロ養殖が島嶼域の各地で展開されてきており、島嶼域の水産業や地域社会自体が急速に変化しつつあります。絶滅の恐れのある種類については、生息環境を含めた保全への取り組みが求められますが、島嶼域の自律的な発展に際しては、水産資源の動向把握と持続的な利用へ向けた取り組みがより強く求められています。本シンポジウムでは、鹿児島県の島嶼域の魚類に関する多様性研究や生態、資源、水産振興に関する研究者が集い、多様性の再評価と共に、島嶼域の自律的な発展を目指した利用のあり方について認識を深めることを目的としました。「豊かな海の生態系を見守り、環境と調和した島嶼域の水産業と社会のあり方」を提言する機会としたいと考えています


●プログラム・要旨

13:00  受付

13:30  開会

13:30  趣旨説明

          ●寺田竜太(鹿児島大学水産学部)

13:35  『島嶼域における魚類の種多様性と分布特性』

          ●本村浩之(鹿児島大学総合研究博物館)

  • 【要旨】
     鹿児島県の島嶼は、県本土北西沖の八代海に浮かぶ獅子島(北緯32°)から沖縄島辺戸岬北方沖の与論島(北緯27°)まで南北600 kmにおよぶ広域に散在している。主な島嶼群として、北から南へ甑島列島、宇治群島、草垣群島、大隅諸島、トカラ列島、奄美群島があり、およそ600の島から構成される。大隅諸島から奄美群島までを薩南諸島とよぶ。
     これまで鹿児島県の島嶼における包括的な魚類の種多様性調査は行われておらず、各種の分布情報としては、漠然と「薩南諸島に生息する」、「琉球列島に分布する」などとされていた。しかし、近年、演者らの研究チームによる島ごとの大規模な魚類相調査によって、鹿児島県の島嶼域における魚類多様性と魚類相の特徴が解明されつつある。ここでは、各島嶼群の魚類相の特徴を踏まえつつ、薩南諸島を二分する魚類生物地理区形成の要因を探り、その境界線がある屋久島の特異的な魚類相を紹介する。また、現在調査中の甑島列島や宇治群島の魚類相の特徴を紹介したい。


14:15  『絶滅の恐れのある魚類と保全へむけた取り組み』

          ●久米 元(鹿児島大学水産学部)

  • 【要旨】
     鹿児島県では現在、環境省により最も絶滅の恐れのある種として10種以上の魚類が指定されている。その代表種が、もともと琉球列島にのみ分布するリュウキュウアユである。日本本土から屋久島にかけて生息するアユとは別の種類で、野生のものは現在奄美大島にのみ生息している。奄美大島では古くから“ヤジ”と呼ばれ、地元の人たちに親しまれてきた。アユ同様、リュウキュウアユは両側回遊を行い、川のみならず、冬季から早春にかけて成育場として数か月間、海を利用している。私たちの研究室では、リュウキュウアユが奄美大島の川と海をどのように利用して生活しているのか詳しく知るために、琉球大学、鹿児島県環境技術協会の研究者の方々と共同でさまざまな調査、研究を行っている。また、野生個体群の絶滅の危機に備えるために種苗生産技術の開発や、保全への気運を高めるために地元小学校への出前授業、地域住民の方々との産卵場の造成等といったアウトリーチ活動を行っている。本シンポジウムでは、リュウキュウアユの生態について分かってきたこと、保全へ向けた取り組みについて、最新の知見を織り交ぜながら紹介したい。


14:55  休憩

15:05  『鹿児島県島嶼域の水産業概要と資源保護に向けた取り組み事例』

          ●宍道弘敏(鹿児島県水産技術開発センター)

  • 【要旨】
     温帯から亜熱帯にかけての南北約600kmに及ぶ広大な県土を有する鹿児島県は、薩摩・大隅両半島と、獅子島、甑島、種子島、屋久島、トカラ列島、奄美群島など多くの島嶼により構成され、海岸線長は2,664kmに達する(全国第3位)。周辺海域は、複雑な海岸線や海底地形、及び日々流路が変動する黒潮の影響により、複雑な海洋環境を呈している。多種多様な水産資源を対象に営まれる本県の海面漁業・養殖業は、生産量約146千トン(全国第9位)、生産額は約766億円(全国第4位)(H25)であり、全国でもトップクラスの水産県である。さらに、有人離島面積及び離島人口が全国第1位であり、島嶼域において、水産業が主要産業として盛んに営まれている点が特徴といえる。ここでは、鹿児島県海域、特に島嶼域を取り巻く海洋環境の特徴と、多様な漁業資源を対象に営まれている水産業の概要を紹介するとともに、厳しい経営環境の中、漁業者らが自主的に資源保護に取り組んでいる事例として、甑島のキビナゴ、南西諸島のマチ類の資源管理の事例を紹介する。


15:45  『鹿児島県島嶼域における漁業振興に向けた取り組みの成果と課題』

          ●鳥居享司(鹿児島大学水産学部)

  • 【要旨】
     鹿児島県は数多くの離島を抱えている。その離島経済を支える産業のひとつは「水産業」である。離島周辺で漁獲される魚介類の多くは本土市場に出荷され、我々の食卓を支えている。
     しかし、離島における漁業経営は厳しさを増している。燃油や漁具など生産関連資材は本土に比べて割高であり、生産コストは高止まりしがちである。出荷はフェリーの運航スケジュールに規定され、輸送費用も嵩む。市場までの時間距離が長いことから、鮮度劣化に伴うセリ入札価格の下落もみられる。このように離島における漁業経営は生産から販売まで条件不利を被る。離島漁業の衰退は、漁業の有する多面的 機能の喪失、離島経済や食料供給の弱体化を招く可能性がある。一方で、各漁業地域では、漁業振興を目指した取り組みが展開している。
     そこで本報告では、漁業振興に向けた多様なアプローチによる効果と課題について紹介したい。まず、離島漁業の振興を目的にした政策的支援の枠組みについて整理する。それを踏まえたうえで、養殖資本の誘致による振興を目指す甑島(薩摩川内市)、冷凍出荷による販路確保を目指す中之島(十島村)、生産振興による振興を目指す与論島(与論町)の事例を紹介したい。これらの事例を通じて、離島における漁業振興に向けた取り組みの成果と課題について整理したい。


16:25  総合討論

17:00  閉会


●ポスター


(ポスターjepg


●当日の様子
シンポジウム開始前の風景

司会の河合 渓センター長(国際島嶼教育研究センター)
本村浩之教授(鹿児島大学総合研究博物館)

久米 元准教授(鹿児島大学水産学部)

宍道弘敏研究専門員(鹿児島県水産技術開発センター)

鳥居享司准教授(鹿児島大学水産学部)


コーディネータの寺田竜太准教授(鹿児島大学水産学部) 総合討論の様子



●問い合わせ先
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター  〒890-8580 鹿児島市郡元1-21-24
電話099-285-7394  FAX099-285-6197  E-mail: shimaken@cpi.kagoshima-u.ac.jp




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