国際島嶼教育研究センター
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島を結ぶ学びと連携-地元学と島嶼学の同時展開-
日時:平成26104日(土)  1300 1700
会場:中種子中央公民館2階大ホール
副会場:鹿児島大学総合教育研究棟5階国際島嶼教育研究センター会議室
中継:
奄美サテライト教室・与論地域活性化センター
参加費:無料

案内ページ   ・当日の様子

  平成26年10月4日(土)に学長裁量経費島嶼研究コアプロジェクト主催、中種子町・鹿児島大学国際島嶼教育研究センター共催で鹿児島大学シンポジウム『島を結ぶ学びと連携-地元学と島嶼学の同時展開-』が開催されました。台風の接近にともない、急遽主会場を鹿児島大学に変更いたしました。


●島嶼研究プロジェクトの紹介
  島嶼研究コアプロジェクトは、鹿児島大学憲章の研究教育重点5分野「環境」「食と健康」「水」「エネルギー」と並ぶ柱「島嶼」について学部横断的体制を構築するための企画で、毎年調査・報告会・報告書作成を続け、その教育研究体制の確立と充実に向けて蓄積を続けています。今年は今までの成果(特に昨年度の島人を招いての報告会)を受けて、本シンポジウムを企画いたしました。今回は種子島・薩南諸島を核にして、奄美群島を含む鹿児島“列島”とその延長上の諸地域との関わりあいにまで論を広げます。研究や学問を柱としながらも、地域(島嶼)との連携・地元との協働可能性と、その具体的意義と役割についても考えて行きます。


●趣旨
  鹿児島島嶼は、面積(沖縄県全域以上)で、そして離島の人口でも日本一で、南北600kmという広がりでも、特異の多様性と連続性を有している、個性豊かな地域です。ただいずれにおいても、地域課題として、若者を引き付ける産業の振興、若者・生産年齢人口の島内確保、地域文化の振興、他地域との連携等に於いて諸課題を有しています。文化・自然・産業の展開は各島の個別問題だけではなく、共通課題でもあります。島同士の連携や、相互の関係史を振り返りつつ、本土側をも意識した多島域的連携は、今あらためて新しい展開と局面を必要としています。今回は、薩南諸島に視座を置いて、その「つながりの歴史」と、展開と、新しい可能性について、地域振興の担い手たちも交えて考えたいと思います。
  「つながりの歴史」では、柳田国男研究の第一人者石井正己教授(東京学芸大学)を招いて、「海上の道」論をあえて種子島の地で論じてもらいます。これについては、全京秀客員教授(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)に、沖縄や韓半島などと結ぶ黒潮文化論視座からコメントを貰います。
  シンポジウムでは地元の方々も交えた論と展開します。屋久島から種の保全活動について、口永良部から環境・地域・地域のガイド活動について、種子島からは農業園芸活動と、海に関わるスクール活動等の報告をしてもらいます。また大学側からは、島嶼観光論(文化人類学)と島嶼情報論(情報工学)に関して地域での具体的取り組み事例を報告します。
  会場の皆様、今回は主会場のみならず中継各地の皆様も交えての意見交換にも、工夫してみたいと思っています。広域・広義の島嶼振興論に学問がいかに寄与できるか、大学の在り方も含めて、幅広いかつ具体的な意見をお待ちしています。事後の通信による意見表明も歓迎いたします。


●プログラム

13:00 開会

13:10 基調講演
     「薩南諸島で考える海上の道」
        ●石井正己(東京学芸大学)
  •  柳田国男は『海上の道』(1961年)を著し、自分の経験と豊富な知識を総合して、日本民族の起源を考えた。その際、奄美大島はともかく、薩南諸島が十分に意識されたとは言いがたい。だが、この一列に並ぶ島々は、沖縄と九州を結ぶ「道の島」としての役割を担ってきた。南の文化と北の文化の中継地であったことが、近年の研究から明らかになっている。一方で、柳田国男は沖縄を考える際に孤島苦を憂い、『島の人生』(1951年)を著した。情報化社会と国際化が急速に進む時代にあって、島に生きることの誇りを考えてみたい。一例をあげれば、屋久島の世界遺産と種子島の宇宙センターが隣接してある。それは自然と科学、過去と未来の共存を考える契機になるはずである。

14:10 基調講演に対するコメント
        ●全 京秀(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)

14:25 休憩

14:35 シンポジウム・テーマ解題
        ●長嶋俊介(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)

14:40 「海洋学校などの取り組み」
        ●久米満晴(NPOタートルクルー)
  •  私たちは「ひとも海亀も自然の一部」を合言葉に、北太平洋の中で有数のアカウミガメ産卵地である種子島において、海亀を通じて自然の大切さ厳しさ楽しさを伝えていく自然啓蒙活動を行なっています。種子島は他の離島に漏れず、若者の流出という過疎化問題を抱えており、島の自然の素晴らしさを感じずに島を去る若者があまりにも多い事が懸念されています。また、人と自然との共存を考えると、自然を大切に思う気持ちを育む事が大切と考え、それには自然に接する機会を増やすことが一番の近道という思いからヨット等を用いた海洋体感活動も行っています。ここ南薩地方から世界へ、海亀をテーマに自然共生交流を行うことを目標としています。

14:55 「農による地域づくりと発信」
        ●遠藤裕未(なかわり生姜山農園)
  •  西之表市で唯一廃校となってしまった中割校区鴻峰小学校を拠点に、この小学校がある生姜山集落という名前の由来でもあり、かつ「健康野菜」として有名な「生姜」の栽培と商品化を通して、過疎高齢地域の活性化に取り組んでいます。中心メンバーが高齢で人数も少ないため、市街地から「農園サポーター」を募り、農作業に協力してもらうところからスタートしました。また、都市部との繋がりを持つために、生姜のオーナー制度「マイジンジャープロジェクト」を実施し、単なる「消費者」でない関わり方を持ってもらうことで、活動自体を応援してもらえる仕組みを作っています。

15:10 「種の多様性保全活動」
        ●手塚賢至(屋久島生物多様性保全協議会)
  •  種子島、屋久島、口永良部島の三島に自生する絶滅危惧植物二種の保全活動を通して豊かな自然環境を大切に守り、後世に伝えることの意味について考えます。ヤクタネゴヨウは屋久島と種子島にしか生えていない固有の五葉松です。屋久島には世界自然遺産地域内を中心に約2000本、種子島には約300本が残存していますが種子島では松枯れ病の影響で生存本数が減少しています。タカツルランは国内では三島が北限の熱帯性の無葉ランです。スダジイやタブが生える照葉樹林の中でも特に原生的な森林の中で菌類とともに共生しています。このランが生き永らえる何世代もの命が繋がる古い照葉樹林は種子島、屋久島では様々な開発のために残り少なくなり今やタカツルランは風前の灯です。熊毛地域に特有の貴重な生き物たちの多様性と豊かな自然環境の中で育まれる文化の多様性を新たな「地域の学び」として結びあえることを願っています。

15:25 「地域案内ビジネス」
        ●貴舩恭子(口永良部)
  •  口永良部島は、屋久島の北西約12kmに位置するひょうたん形をした小さな島です。8月3日に34年ぶりに噴火したのをニュースでご覧になった方も多いかと思いますが、記録に残っている限りでも幾度となく噴火が繰り返されていている活火山の島でもあります。また、平成19年には全島が屋久島国立公園に指定され、自然環境保全と観光利用の両立を目指しています。この口永良部島で取り組んでいる新しい観光の形として“里のエコツアー”の紹介と“里のエコツアー”を通じで得られた島の変化について、さらにそこから口永良部島が抱える大きな課題である人口問題に対し、今出来る事は何かを考察します。

15:40 「観光と文化人類学」
        ●桑原季雄(鹿児島大学法文学部)
  •  鹿児島県本土の南の海上には三島(竹島、薩摩硫黄島、黒島)、大隅諸島(種子島・屋久島・口永良部島)、トカラ列島(口之島、中之島、諏訪瀬島、平島、悪石島、小宝島、宝島)、奄美群島(奄美大島、加計呂痲島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)など、21の有人島が南北500キロの海上に連なる。では、これらの島々はこれまで、相互にどのような関係を取り結んできたのだろうか。本発表では、島嶼学と観光人類学の観点から、まず最初に、全国一の島嶼県である鹿児島の薩南諸島の島々で展開されている観光化の現状を大まかに概観し、次に、観光の視点でみた各島々の間の繋がりについて見ていく。そして最後に、種子島と屋久島の観光を鹿児島県島嶼の観光全体に位置づけて比較考察し、その特徴や今後の展望について述べてみたい。

15:55 「島々を繋ぐ展開と情報工学」
        ●升屋正人(鹿児島大学学術情報基盤センター)
  •  鹿児島の島々においても情報通信基盤の整備が進み、今や高速回線でインターネットにつながらない離島は存在しないとされている。ところが、島ごとに情報通信環境は大きく異なり、実際には、その格差は整備前に増して拡大してきている。また、生活に関わるさまざまなものが情報通信基盤と密接に関わるようになり、つながりが途絶えると日常生活が多大な影響を受けるようになってきた。その一方で、情報通信基盤は島々を距離の制約から解き放ち、その利活用はさまざまな新たな展開をもたらすものでもある。これらを踏まえて、鹿児島の島々がどのようにつながっているかを概観し、現状と問題点を考察するとともに、つながりを活かした島々の将来を展望する。

16:10 休憩

16:20 討論

17:00 閉会




ポスターjepg



●当日の様子

会場の風景

基調講演をされた石井正己先生

基調講演に対するコメントをする全京秀先生

手塚賢至先生

桑原季雄先生

升屋正人先生

総合討論

質疑応答をされる先生方1

質疑応答をされる先生方2


●問い合わせ先
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター  〒890-8580 鹿児島市郡元1-21-24
電話099-285-7394  FAX099-285-6197  E-mail: shimaken@cpi.kagoshima-u.ac.jp

中種子町会場等連絡先:中種子町企画課
電話0997-27-1111 Fax0997-27-3634





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