国際島嶼教育研究センター
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研究会などの記録 
2024年(島嶼研)

  • 国際島嶼教育研究センター第237回研究会
    2024年3月18日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    自然と調和した可能性のある島(?)先史時代の奄美・沖縄諸島

    髙宮広土(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)



    [要旨]
     「先史時代」とはヒトは存在するが文字のない時代のことを言う。すなわち、厳密に言えば、歴史時代とは文字を伴う時代のことである。さて、奄美・沖縄諸島の先史時代は一般的に旧石器時代(3万年前〜1万年前)、貝塚時代(1万年前?〜1000年前)およびグスク時代(11世紀後半〜15世紀)から構成されている。この地域の先史時代を世界的なレベルで他の島々と比較すると他地域の島々の先史時代には存在しない大変珍しい文化現象がいくつかあったことが最近の研究で示唆されている。今回の発表ではそのうちの一つである「自然と調和した可能性のある島(?)」について紹介したい。
     島嶼環境を研究する研究者の島の環境に関する意見は「島の環境は大変脆弱である」ということである。この点は現代だけではなく、過去にも当てはまる。島が成立してそこに植物や動物が植民し、何万年あるいは何千万年という長い時を経て、バランスの取れた環境が創造される。そこに新しい種が植民すると島の環境は最も簡単にそのバランスが崩れると考えられている。その「新しい種」で最も島嶼環境に影響を与える生物がヒトである。ヒト1種がバランスと取れた環境に植民するだけで、彼・彼女らは森林資源および生息する動植物を利用する。これらの行動が引き金となり、島嶼環境は激変する。
     世界の島の先史学から提言されている「定説に近い仮説」は「ヒトが島嶼環境に適応すると島の環境は劣悪化あるいは環境破壊が起こる」というものである。オセアニアの島々、カリブ海の島々および地中海の島々では、ヒトが島に出現すると森林破壊や土砂崩れが報告され、さらに多くの動物が絶滅したことが確認されている。
     奄美・沖縄諸島でもヒトの植民後、おそらく環境破壊あるいは劣悪化が起こったと考えられ、先史時代におけるヒトと島嶼環境について考察した。しかし、奄美・沖縄諸島先史時代においては、上記の「定説に近い仮説」は当てはまらないかもしれない。先史学的・考古学的調査のなされた島において、このような島は世界に他に存在しないかもしれない。



  • 国際島嶼教育研究センター第236回研究会
    2024年1月22日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    大日本帝国期の建築物の現在から見る歴史認識~沖縄と台湾を事例に

    上水流久彦(県立広島大学地域基盤研究機構)



    [要旨]
     世界遺産や日本遺産など、たくさんの建築物が遺産に認定されています。そして、遺産の認定は、政府の方針、国民感情、建築学や歴史学の専門家の意見のもと決定され、歴史認識や国家アイデンティティをめぐる争いの場となります。例えば、朝鮮総督府だった建物は壊されていますが、台湾総督府だった建物は現在も中華民国総統府として使用されています。今回の発表では、建築物の現在を紹介して、台湾や沖縄の歴史認識を考えてみたいと思います。
     発表者は大日本帝国の建築物の現在を5つに分類しました。それは、外部化(破壊や放置)、内外化(負の歴史として自らの歴史の一部として遺産化)、内部化(一種肯定的に遺産化)、溶解化(日本統治の過去を忘却し利活用)、遊具化(日本的要素を強調して観光地化)の5つです。現在の台湾では、植民地支配の記憶を継承するという側面がかなり希薄になり、むしろ観光施設として利用されるようになっています。那覇では十十空襲によって記憶を喚起する帝国期の建築物はなく、沖縄戦の悲惨な歴史が強調されています。忘却させられた近代とも言えます。それに対して、沖縄県の周辺部では、建築物が残る地域では、地域の近代化を物語る道具として活用されています。






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