国際島嶼教育研究センター
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研究会などの記録 
2019年(島嶼研)

  • 国際島嶼教育研究センター第200回研究会
    2019年11月25日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「地域での暮らしを最期まで支える人材育成における離島の魅力」

    丹羽さよ子(鹿児島大学医学部保健学科)
    金子美千代(元鹿児島大学医学部島嶼地域ナース育成センター)


    [要旨]
     我が国は、高齢多死社会、2025年問題に対応するために、要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるよう、それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制、つまり地域包括ケアシステムの構築を喫緊の課題としている。我々は、この課題に応えるべく、文部科学省「課題解決型高度医療人材養成プログラム」として平成26年度に採択された「地域の暮らしを最期まで支える人材養成―離島・へき地をフィールドとした教育プログラム―」を実施し、昨年度末の5年間で46名の修了生を輩出した。今回は、本事業・教育プログラムの概要と背景、離島での実習の実際とその効果等について紹介し、地域での暮らしを最期まで支える人材育成の環境としての離島の魅力を考察したい。



  • 国際島嶼教育研究センター第199回研究会
    2019年9月30日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「サワガニ類と島嶼環境」

    成瀬 貫(琉球大学熱帯生物圏研究センター)


    [要旨]
     サワガニ類は、日本には琉球列島(種子島~与那国島)に22種、大隅半島に1種、上甑・下甑島に1種、黒島・宇治群島・口永良部島に1種、中之島・鹿児島両半島~青森に1種、が記載されており、重複を除くと計24種が知られている。サワガニ類の分布の中心は熱帯~亜熱帯域であり、世界からは実に1300種ほど知られており、その数は現在も増え続けている。およそ7200種知られているカニ類全体の約18%を占める、非常に大きなグループである。九州や本州などの温帯域では、いわゆる沢や緩やかな流れの川の上流、またその周辺に生息しているが、熱帯・亜熱帯ではより多くの生息環境に適応している。またサワガニ類は直達発生(プランクトン期がなく、親のミニチュアとして産まれる)をするため、生活史はすべて陸封化しており、島嶼環境で固有化している例が非常に多い。本公演では、このようなサワガニ類の起源や多様化、また島嶼での固有化や適応について概説する。



  • 国際島嶼教育研究センター第198回研究会
    2019年7月8日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「琉球列島における人類文化の起源を探る」

    山崎真治(沖縄県立博物館・美術館)


    [要旨]
     1960年代から70年代にかけて行われた山下町第一洞穴遺跡(那覇市)や港川遺跡(八重瀬町)の調査を通して、沖縄の旧石器人骨研究は大きく進展したが、石器等の明確な人為遺物が伴わなかったため、当時の人々の生活場所や文化について大きな謎が残された。1980年代以降、日本では大規模開発の増加とともに、事前調査による旧石器時代遺跡の調査が相次ぎ、奄美大島や徳之島、種子島でも石器を伴う旧石器時代遺跡が発見されていったが、沖縄では確実な旧石器は未確認のままであった。
     2006年から沖縄県立博物館(当時)では、国立科学博物館や東京大学、沖縄県内の研究者と連携して、新たな人骨化石や旧石器の発見を目指した調査研究プロジェクトを立ち上げ、沖縄本島南部の石灰岩洞穴を対象として継続的な発掘調査を行ってきた。2009年に着手したサキタリ洞遺跡(南城市)の発掘調査では、約4万年間に及ぶ保存良好な堆積層を確認し、旧石器時代の層準から人骨とともに貝器や石器、食料残滓と考えられる動物遺体等を検出し、旧石器人の文化や生活の実態に迫る手がかりを得ることができた。本発表では、サキタリ洞遺跡の調査成果に基づいて、沖縄における旧石器人の文化と生態およびその年代的変化について報告する。



  • 国際島嶼教育研究センター第197回研究会
    2019年6月17日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「住まいとしての船―定住本位社会において水上で動きつづける中国福建の連家船漁民―」

    藤川美代子(南山大学人文学部)


    [要旨]
     近代国家の登場は、世界の遊動的な人々(山地の狩猟採集民・焼き畑農業民、平原の遊牧民、水上の船上生活者、都会のロマなど)に「定住化」を促してきた。定住化とは、特定の土地に束縛されることなく、住まいを携えて複数の空間間でくり返される移動こそを常態としていた彼らが、管理・文明化・保護などを目論む国家により突如として何ら縁もない土地へと固定化され、その土地と、そこに紐づけられる形で登場した共同体とに根を張るよう仕向けられる過程と読むことができる。
     本発表では、定住型管理社会とも呼び得る現代を、なお船に住まいながら生きる中国福建省南部の「連家船漁民」を取り上げ、彼らの住まいをめぐる歴史と実践をより微視的に見つめることで、「水上での移動から陸上での定住へ」という単純かつ単方向的な枠組みでは理解できぬような彼らの生き方の論理を読み取ることを目指す。



  • 国際島嶼教育研究センター第196回研究会
    2019年5月27日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「スマトラ北部の植生の紹介」

    鈴木英治(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)


    [要旨]
     インドネシアでも原生状態に近い熱帯林が残っている地域は年々減少しているが、その中でもスマトラ北部はまだ比較的森林が残っている地域になる。またゾウ、オランウータン、トラなどの豊富な動物相でも有名である。2009年にスマトラ北端の州であるアチェ州のゲウンパン―パメウ周辺、2014年と2015年にはアチェ州接する北スマトラ州のレウサー山国立公園タンカハン周辺に調査に行く機会を得た。それらの地域の植生について紹介する。



  • 国際島嶼教育研究センター第195回研究会
    2019年4月22日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」における「天草の﨑津集落」について」

    中山 圭(天草市観光文化部文化課)


    [要旨]
     「天草の﨑津集落」は、平成30年7月に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する12の資産の一つである。この世界文化遺産は、近世のキリスト教禁教下で、神道や仏教など日本の伝統的宗教や一般社会と関わりながら、密かにキリスト教信仰を継続した潜伏キリシタンの伝統の証となる遺産群である。天草の﨑津集落はその中で、「身近なものを信心具として代用することで信仰を実践した集落」として、OUV(Outstanding Universal Value:顕著な普遍的価値)に貢献している。
     本発表では、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の概要を述べ、その上で、「天草の﨑津集落」がどのような特性と歴史的価値を有しているのかについて解説する。具体的には①﨑津集落の文化財保護法に基づく保全の在り方、すなわち国選定重要文化的景観「天草市﨑津・今富の文化的景観」の特性、②OUVに貢献するためにどのように潜伏キリシタンの伝統に関する真実性を証明したのか、という2点について、詳しく発表したい。



  • 国際島嶼教育研究センター第194回研究会
    2019年3月11日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「離島における歯科医療」

    田口則宏(鹿児島大学医歯学総合研究科)


    [要旨]
     これまで歯科の二大疾患といわれていたのはう蝕(虫歯)と歯周病である。近年全国的にう蝕保有率が大きく減少するなど口腔衛生状態が改善しており、市民の口腔への関心が高まりつつある。一方で、残念なことに鹿児島県は年少者のう蝕罹患率が高く、また日本一の離島人口を抱えるとともに高齢化率も高いため、特有の歯科医療提供体制が求められている。その一つに、鹿児島県の委託事業として鹿児島県歯科医師会が実施している「離島巡回歯科診療」がある。この事業では歯科医師が不在の離島に、年間2回程度の頻度で歯科医療チームが数日間滞在し、歯科医療をはじめ口腔衛生志向の普及を図るというものであり、鹿児島大学病院も歯科医師の派遣等に数十年にわたって全面的に協力している。
     今回の発表では、これら鹿児島県の抱える歯科的な問題点とともに、離島地域における歯科医療提供体制を紹介する。その上で、将来的に地域に貢献しうる人材育成に努めている鹿児島大学歯学部が、平成27年度に全面的に改革した学部教育カリキュラムの一端に触れ、地域社会の発展に貢献している歯学部の活動を紹介する予定である。



  • 国際島嶼教育研究センター第193回研究会
    2019年1月15日(火)16時30分 総合教育研究棟5階

    「なぜダニ類は昆虫以外の陸上節足動物の中で最も種数が多いのか?」

    島野智之(法政大学自然科学センター)


    [要旨]
     クモガタ綱(蛛形綱)のうちダニ類だけは捕食性のほかに、寄生性、食植生、食菌性、腐食性など様々な食性を示し、体を小さくし、地球上のあらゆる環境、あるいは隙間環境にもぐりこんで生活することができる。ダニ類は、大袈裟な言いかたをすれば「この地球上はダニだらけ」なのである。しかしながら、日本に記録されているダニ類は2000種そのうちヒトの血を吸うダニはわずか1%、自由気ままな他のダニ達は迷惑しているに違いない。
     そんなダニ達は、地球上のあらゆる環境に生息している。陸上中心ではあるがダニは深海から高山までに生息している。ダニ類と昆虫類はともに、海中に生息していた節足動物の祖先が陸へ上陸し、陸上で発生したと考えられる。しかし、昆虫類は海へ再び進出することはできなかった。
     世界で約 1 万種が記録されている分解者としての土壌ダニ、ササラダニ類は、多様でかつ奇妙奇天烈な姿をしている事で知られている。ササラダニ類は他のダニ類のように、素早いスピードで動くことが出来ないため、様々な防御戦略をとることによって、形態的な多様性を産みだしていると考えている。ササラダニ類を中心に島嶼調査を紹介する。他の自由気ままなダニ達についてもその奇妙な生態について触れたい。






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