国際島嶼教育研究センター
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研究会などの記録 
2018年(島嶼研)

  • 国際島嶼教育研究センター第188回研究会
    2018年6月18日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「津波の数値解析の紹介及び多変量解析に基づく日本の離島の考察」

    柿沼太郎(鹿児島大学学術研究院理工学域工学系)


    [要旨]
     まず、津波の数値解析に関して、幾つかの手法を紹介する。水の波の性質を決めるパラメタの一つは、波の長さと、水の深さの比である。水深4千メートルの太平洋を進む、波長数十キロメートルの津波は、波長に比べて水深が浅いから、浅い波と言える。これに対して、一般に、水深50センチの風呂で作る波長5センチの波は、波長に比べて水深が大きく、深い波ということになる。津波や、高潮は、非常に長い波であり、これを起因として様々な被害が生じる。ここでは、海底地震や、地すべりによって引き起こされる津波の数値解析例を紹介し、鹿児島県の津波に言及する。次に、離島の特性に関して論じる。離島における産業の振興や、文化の継承のためには、離島が有する様々な特性の現状を知る必要がある。そこで、主成分分析や、クラスタ分析を用いて、日本の離島の統計量から、特性を抽出することを試みた。離島の経済力、離島の潜在能力・魅力、そして、離島における居住性の3点に着目して得られた結果に基づき議論したい。

  • 国際島嶼教育研究センター第187回研究会
    2018年5月28日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「マレーシア・サバ州島嶼における陸貝の生物地理学的研究」

    P. チー チェン(サバ大学熱帯生物保全研究所)


    [要旨]
     島嶼は生物地理学や進化学の研究において、いつも大きな関心を持たれる地域です。サバ州には島の持つ特徴の一つである「隔離」や「大きさ」という点で多様な島々が500ほどあり、また、これらの島々は「気候」や「歴史的(進化)過程」においても異なる経緯を経てきました。サバ州は世界的に見ても生物多様性の高いホットスポットですが、残念ながらサバ州の島嶼における生物多様性に関する情報は十分ではありません。
     サバ州の西の24の島々に生息する陸貝のリストは、「種組成」や「種の豊かさ」に対しての島の「大きさ」や「隔離」の効果を示してきました。本研究での北西の島々で採集したアオミオカタニシ属の陸貝(Leptopoma pellucidum)の系統地理学的研究もまた現在の「遺伝的分布」と「遺伝的構造」を提示し、分子時計で補正された系統樹は「歴史的(進化)過程」を推測することができました。
     サバ州西沿岸の24の島々の133調査地点、そしてデータベースと論文に記載された陸貝は全67種でした。この陸貝の「種組成」パターンは非常に集合した状態を示しており、これは「隔離」と「大きさ」という両方の要因により影響を受けているといえます。また、多くの大陸近くの島での研究で示されているように、サバ州沿岸の島での「種の豊かさ」は「隔離」よりも島の「大きさ」に影響を受けていました。そして、L. pellucidumの系統地理学的研究からみた「遺伝的構造」は3つの主要な系統に分けられました。驚くことに、この陸貝の遺伝的分岐時期は最終氷期での海面上昇による島の隔離時期と一致しませんでした。おそらく、この系統は中期から後期更新世の間で分岐したと考えられます。このことは氷期の前期と更新世での気候変動がこのような分岐を引き起こしたと考えられます。
     この研究によりボルネオ島の生物地理学的かつ進化学的な過程を解明することができました。

  • 国際島嶼教育研究センター第186回研究会
    2018年4月23日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「奄美大島におけるリュウキュウアユの生活史」

    久米 元(鹿児島大学水産学部)


    [要旨]
     リュウキュウアユは、日本全国に広く分布するアユとは別の亜種で、野生の個体群は奄美大島のみに生息している。奄美大島では古くから“ヤジ”と呼ばれ親しまれており、元々は食用としても利用されていた。外見はよく似ているが、最大で30センチを超えるアユに比べてより小型で15センチ程度である。かつては沖縄本島にも生息していたが、環境の悪化にともないすでに絶滅してしまった。現在は環境省と鹿児島県に絶滅危惧種として指定され、地元の方々に大切に保護されている。私たちの研究室では、リュウキュウアユの保全を目指し、これまで様々な生態研究を実施してきた。個体数は年により大きく変動すること、アユ同様、川と海を行き来して生活する両側回遊魚であるが、仔稚魚期は沖合域へと移動することなく、主に河口・沿岸域で生活していること、そのため河川ごとに複数の個体群が存在すること等、興味深いデータが多く得られている。本報告では、リュウキュウアユに関しこれまでに得られた最新の研究成果や保全に向けた取り組みについて紹介したい。



  • 国際島嶼教育研究センター第185回研究会
    2018年2月19日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「島外出産を経験した母親の妊娠期・分娩期における思いやニーズ―フォ―カス・グループ・インタビューを通して―」

    中尾優子・井上尚美(鹿児島大学大学院保健学研究科)


    [要旨]
     日本は産科医不足や助産師の偏在化により、離島やへき地の周産期医療に携わる医療従事者の不足が顕著になっており、健診や分娩場所について妊産婦への負担が予想される。今回、島外出産を経験した母親にフォーカス・グループ・インタビューを行い、母親の思いやニーズを明らかにした。対象は、A島に居住する島外出身者母親6名と島内出身者4名であった。分析の結果、17のサブカテゴリーと【産科施設が無い島内で妊娠生活を送る大変さ】【家族の存在が大きいことへの気づき】【島外生活のやるせなさ】【付きまとうお金の心配】【この妊娠を守りたい】の5つのカテゴリーが抽出された。また、『島外生活の支援を充実させてほしい』『島内で産みたい』『妊婦健診時にアドヴァイスがほしい』『助産師に相談する機会が欲しい』『島と病院がより連携してほしい』の5つのニーズが抽出された。島外、島内出身者共に支援を強化していくことが必要であり、特に島外出身者においては、妊娠中の支援が必要であることが示唆された。島外出産を支援するために、島外での出産の情報の提供やピア・サポート・グループの利用など支援システムの充実が必要である。



  • 国際島嶼教育研究センター第184回研究会
    2018年1月22日(月)16時30分 総合教育研究棟5階

    「南洋群島の朝鮮人―ヤップ島地域におけるコプラ産業と朝鮮人―」

    趙誠倫(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター、国立済州大学)


    [要旨]
     この研究はヤップ島地域で活動した朝鮮人商人たちがコプラ収集活動に従事したことを確認して、彼らを通じて南洋群島での朝鮮人の適応戦略を検討する。
     韓国の濟州島に住んでいる高斗星氏は1934年生。ヤップ島で生まれ、7歳まで住んでいたが、1940年に家族と一緒に済州に戻った。その父高明黎は1921年に日本人の紹介でヤップ島に移住した。彼はそこで店を開いて商売をしながら、原住民たちからコプラ(Copra)を収集した。
     一方、黃永三はサタワル島に居住しながら、住民を動員してコプラを収集した。彼は住民らに殺害されたが、その後に土方久功がその島に入る。黄に関する資料は土方久功の記録を通じて確認できる。土方久功はそこに弟子と一緒に入って、コプラ収集商の役割をしながら、他方では民俗学者として、芸術家として作業を継続する。
     高明黎と黃永三、両ケースは太平洋戦争以降に強制動員された朝鮮人たちと違って、自ら南洋群島に行って商業活動に従事したケースだと考えられる。朝鮮人が南洋群島の島で事業で成功するためには、現地日本人社会の認定を受けて彼らのネットワークの中に入ってこそ可能なことだっただろう。




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