国際島嶼教育研究センター
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研究会などの記録 
2011年(島嶼研)

  • 2011年12月19日(月)第120回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「バングラデシュにおける水産業と国民経済への貢献」

     Zoarder Faruque Ahmed (国際島嶼教育研究センター)


    [要旨]
      バングラデシュは,多種多様な漁場環境が生み出す水産資源によって豊かさを享受している。バングラデシュの主要な水産資源は,内水面,汽水域,海面の3つに大別できる。漁獲量は1980年から2008年にかけて毎年約3.6%の伸びを見せてきたが,漁獲量増加の多くはエビ養殖や海面での漁業によってもたらされてきた。
      漁業部門は長らく国民経済へ重要な役割を果たしている。漁業は,食料の供給と消費,栄養バランス,雇用機会の提供,輸出などを通じて,バングラデシュ経済へ大きな貢献をしている。2003/2004年の漁業統計によると,GDPの4.91%が漁業生産によるものである。この数値はSAARC加盟国のなかで最も高いものとなっている。しかし,この数値には,水産加工業や輸送,マーケティングなど水産関連産業による生産金額は含まれていないことから,GDPに占める水産関連産業の割合はもう少し高いものと考えられる。また,漁業部門はバングラデシュにおける輸出金額全体の5.7%を占める。動物性タンパク質の全摂取量の63%を占める。約10%の人々が漁業に関連した仕事に従事している。
      バングラデシュ政府は,バングラデシュの国民に動物性タンパク質を継続的に供給することを目的に,水産資源の保全と管理,水産資源の開発,漁業者の社会経済的状況の改善,地方の失業者への雇用機会の創出,エビなどの水産関連製品の輸出拡大による外貨獲得を目指した活動を展開している。


  • 2011年11月14日(月)第119回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「「理想の地」を求め災害に遭遇する―被害を受けた博物館のひとりごと―」

     原野耕三 (財団法人奄美文化財団原野農芸博物館)


    [要旨]
      当館は2010年10月20日の奄美豪雨で大規模な「土石流」が発生し博物館資料(とくに展示資料)に壊滅的被害を受けた。
      長年にわたり大阪にて博物館活動を行ってきた当館が「自然を求め」奄美の地に活動場所を変えた。その訳は大変ユニーク。「奄美は空気がいい、水もいい。それはよい森林があり、よい山があるからだ。」と云う先代の「こだわり」が移転の「決め手」となった。施設よりも、それをとり巻く環境を重視し、はじめから交通の利便性・観光客などを求めなかった。このようなことよりも、博物館がもつ公共性を活用して、いかに「自然を守るか」ということに重点をおき、父・子・孫にわたって展開してきた。
      しかしこのたびの災害によって窮地にたたされている。隣接地の山崩れの原因は本当に単なる自然災害といえるであろうか。「奄振の置き土産」ではなかろうか。


  • 2011年10月17日(月)第118回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「ケラマジカと島の子どもたち」

     遠藤 晃 (南九州大学人間発達学部子ども教育学科)


    [要旨]
      ケラマジカは、400年ほど前に薩摩から琉球に運ばれたニホンジカの末裔と考えられ、当時の琉球と薩摩、中国の関係を見るうえでの貴重な生き証人として、国の天然記念物にも指定されている。生態学的には、亜熱帯環境でどのようなシカの社会構造が展開されるか、非常に興味深い。10年ほど前から座間味村の慶留間小学校では、3、4年生の総合学習でケラマジカ研究が始まり、今では毎年、沖縄の生物学会で、子どもたちが大勢の専門家を前に、その研究成果を発表している。本研究会では、ケラマジカの生態、それを研究する子どもたちの学びのプロセスとその成果を紹介し、離島の小規模校が持つ教育における優位性についてお話しする。


  • 2011年9月13日(火)第117回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「国際交流における日本の特殊性」

     加藤泰久 (鹿児島大学国際戦略本部)


    [要旨]
      日本は明治維新前後の開国及び近代化に関する150年以上の歴史があるにもかかわらず、今、各分野において「国際化」を改めて促進しようとしている。しかし、国際化という言葉には、これまで国際的な関わりがなかったので、国際的な活動を始めようという響きさえある。この背景には、我々に必要なものを、近代化活動或いは欧米化活動を通じて、これまで積極的に受け入れながらも、それ以外の異文化理解を含めた国際的な事情を日常生活から排除してきた歴史がある。日本では、国際化に対する必要性を「出島的(非日常的)」に扱い、「日本は、海外に頼らなくてもやっていける。」という考え方が、現在のパラダイス鎖国の考え方の背景にあると思われる。


  • 2011年7月4日(月)第116回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「奄美の在来カンキツ−その来歴と特徴−」

     山本雅史 (鹿児島大学農学部)


    [要旨]
      奄美諸島有人島全8島における在来カンキツの分布を調査した結果、種の分布には一定の共通性があるものの、独自性も存在することが明らかとなった。これらの類縁関係および来歴を解明するためにアイソザイムおよびDNA分析を実施したところ、奄美諸島在来カンキツの発生には原生種であるシィクワーサーとベトナム原産であるクネンボが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、これらカンキツ類は機能性(健康維持・増進効果)成分の供給源としても有望で、特にケラジミカンおよび喜界ミカン(カーブチー)の果実中ポリメトキシフラボノイドは、他のカンキツよりも多かった。


  • 2011年6月20日(月)第115回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「Poverty Issues in Pacific Islands」
     NARSEY Wadan (鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)


    [要旨]
       The Pacific Island Countries (PICs) are in an unusual situation in the context of poverty analysis in the developing world. They cannot be classified amongst the poorest less developed countries (LDCs), neither can they be classified as the More Developed Countries (MDCs). As such, internationally used criteria such as the Basic Needs Poverty Line of US$2 PPP per adult per day for poverty analysis, is not suitable for the PICs. Neither are the standards used in MDCs which are far too high for meaningful use.
      This presentation will explain the current methods used by some multilateral organisations (such as ADB and World Bank) to analyse the incidence of poverty in select PICs (Fiji, Solomon Islands, Vanuatu and Tuvalu), some of the drawbacks, and the author’s own approaches.
      Indicative estimates are given, while indirect approaches are also explained. The need for the poverty analysis to be useful for indicators for specific poverty alleviation policies will be emphasized and the results.


  • 2011年5月23日(月)第114回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「太平洋島嶼の自治化プロセスにおける課題の一側面 −クック諸島、ニウエとニュージーランドによる対島嶼外交の再検討およびラパヌイ独立推進派の動向とチリ政府の対応−」
     玉井昇(大分県立芸術文化短期大学国際文化学科)


    [要旨]
      概して、太平洋島嶼は欧米の植民地支配を受けてきたという点で共通の歴史を持つが、現在は、独立した国家もある一方で、他方では大国との自由連合やコモンウェルス、海外領土や属領など、非独立の島々も多数ある。これら非独立の政治的単位の中には、自ら意思で現在の地位を選択した地域もあるが、いずれにしても自治・自立化を進めている場合が多く、そのプロセスにおいて様々な課題に直面している。
      そんな課題の一端を検討するために、ここではポリネシアのラパヌイ(イースター島)とニウエおよびクック諸島の事例を取り上げる。近年ラパヌイでは自治化を要求する声が高まっており、チリ政府の対応も厳しいものになってきている。他方、ニウエとクック諸島について、2010年12月にニュージーランド政府系の委員会によって発表された同国の対太平洋諸島支援策の再検討に関する報告書は、両地域の自治化促進の失敗について言及がなされている。ラパヌイのようにチリからの脱依存度を高めようとする事例と、逆にクックやニウエのように依存度を高めている事例を同時に検討することで、太平洋島嶼における自治化プロセスの課題の一端を整理する。



  • 2011年4月18日(月)第113回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「島嶼活性化のために海洋微生物学は何をなし得るか」
     前田広人(鹿児島大学水産学部)


    [要旨]
       演者は昨年10月に鹿児島大学水産学部に帰任した。前任地の三重大学生物資源学部における6年間の研究活動の中から、島嶼活性化のためのいくつかのヒントを紹介したい。第一は尾鷲市における海洋深層水の利用促進活動の紹介である。尾鷲市は三重県の南部に位置し、ある意味では離島に似た環境で発展してきた地方都市である。主要産業の水産を中心に大学と市役所の連携活動の軌跡を披露したい。第二は伊賀市に産官学連携センターを創設した話題である。伊賀市は三重県と滋賀県、京都府および奈良県との境に位置した地方都市である。忍者の里として知られるように古来から排他的な性格の地域といわれている。このような地域の活性化のために三重大学がいかにして産官学連携センターを構築してきたのかを紹介し、ここでの活動事例として、バイオマスタウン構想の進捗状況を報告する。最後に、海洋微生物学からできる地域貢献策を提案したい。



  • 2011年3月7日(月)第112回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「アダンはどこから来たか?〜パンダナス研究最前線〜」
     宮本旬子(鹿児島大学大学院理工学研究科)


    [要旨]
       タコノキ科Pandanaceaeは,アフリカ,アジア,オセアニアの熱帯から亜熱帯に生育する単子葉植物である。Pandanus(タコノキ)属600 ? 700種, Freicinetia (ツルアダン)属約200種, Sararanga属2種, Martellidendron 属7種が含まれる。日本には,アダンP. odoratissimus L. filまたはP. tectorius Sol. var. liukiuensis Warb.,タコノキP. boninensis Warb.,ツルアダンF. formosana Hemsley,ヒメツルアダンF. williamsiis Merrillの4種が自生する。2009年に北大東島産ホソミアダンP.daitoensis Susanti et J.Miyam.が記載された。今回は主に日本産のタコノキ属とその近縁分類群をめぐる話題を紹介する。



  • 2011年1月24日(月)第111回 国際島嶼教育研究センター研究会
    16時30分 総合教育研究棟5階

    「トカラ列島でのGPS観測」
     中尾 茂(鹿児島大学理工学研究科)


    [要旨]
      国土地理院は1996年以降日本列島にGPS観測点を順次設置し、現在では1200点を超えるGEONET観測網を構築した。しかし、現在巨大地震の発生が想定されていないトカラ列島では、活動的な火山のある諏訪之瀬島に1点設置されているのみであった。この地域では、東にフィリピン海プレートが沈み込む琉球海溝があり、種子島・屋久島や奄美大島・喜界島のGEONET観測点の測定結果からプレート間の固着は弱いと考えられている。しかし、種子島・屋久島や奄美大島・喜界島地域でのプレート間固着を定量的に見積もった例は少なく、観測点がないため、トカラ列島地域では皆無である。そこで、まず、トカラ列島の地殻変動を明らかにし、さらにはプレート間固着の状態を見積もるために、トカラ列島において2007年からGPS連続観測を開始した。現在稼働している観測点は宝島、悪石島、臥蛇島に口之島である。ここでは、その概要を紹介し、2009年10月30日に発生したM6.8の地震の深さについて観測された地震時変動を使って議論する。



    「南西諸島北部領域における微小地震観測」
     八木原寛(鹿児島大学理工学研究科)


    [要旨]
      国土地理院は1996年以降日本列島にGPS観測点を順次設置し、現在では1200点を超えるGEONET観測網を構築した。しかし、現在巨大地震の発生が想定されていないトカラ列島では、活動的な火山のある諏訪之瀬島に1点設置されているのみであった。この地域では、東にフィリピン海プレートが沈み込む琉球海溝があり、種子島・屋久島や奄美大島・喜界島のGEONET観測点の測定結果からプレート間の固着は弱いと考えられている。しかし、種子島・屋久島や奄美大島・喜界島地域でのプレート間固着を定量的に見積もった例は少なく、観測点がないため、トカラ列島地域では皆無である。そこで、まず、トカラ列島の地殻変動を明らかにし、さらにはプレート間固着の状態を見積もるために、トカラ列島において2007年からGPS連続観測を開始した。現在稼働している観測点は宝島、悪石島、臥蛇島に口之島である。ここでは、その概要を紹介し、2009年10月30日に発生したM6.8の地震の深さについて観測された地震時変動を使って議論する。
      奄美大島周辺領域は、地震活動が最も高い領域である。本講演では、これまで行われた研究の中で、奄美大島周辺の地震観測研究に的を絞って紹介する。この領域の地震活動の特徴は次のようにまとめられる。1)顕著な地震活動が奄美大島南東付近の深さ28km付近に認められる。2)深さ10kmよりも浅い地震は発生していない。この特徴は、陸域での地震活動の一般的な特徴とは大きく異なる。3)沈み込むフィリピン海プレートの傾斜角は25°である。現在、我々はトカラ―奄美大島諸島の地震観測網を強化しているところである。






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