国際島嶼教育研究センター
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研究会などの記録 
1997年(南海研)

  • 2月3日(月)第94回南海研センター研究会
    日本のイセエビ・世界のイセエビ
    税所俊郎(鹿児島大学水産学部)
    16時30分 南海研会議室

    [要旨]体長35cmに達する大型のエビでクルマエビと並んで重要な種類である。暖海産で千葉県以南の太平洋沿岸に生息し日本海には産しない。岩礁海岸の浅い所に棲み夜行性で昼間は岩棚などにひそみ夜間に餌を求めて出てくる。外洋性で鹿児島県では内之浦・佐多岬・枕崎・坊津などが産地として知られている。南下するに従ってイセエビは減少し、カノコイセエビ・ケブカイセエビ・ニシキエビ・ゴシキエビ・シマイセエビなどの割合が増える。産卵は夏季に行われふ化した幼生フィロゾーマ幼生・プエルルス幼生を経て稚エビとなるが成長がおそいのでクルマエビのような完全養殖は難しい。禁漁区・禁漁期・体長制限・築磯造成などの保護が必要である。
    外国ではインドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ・カリブ海などが主産地である。寒海性のイセエビ(Jasus)もいて南アフリカ・オーストラリア・ニュージーランド・南アメリカの南部に多く、南極を囲むように分布している。

  • 2月24日(月)第95回南海研センター研究会
    非典型的Fabry病:頻度並びに遺伝子解析
    田中弘允(鹿児島大学医学部)
    16時30分 南海研会議室

    [要旨] 目ざましい進歩をとげた分子遺伝学は、心臓病の病因解明に重要な役割を演じている。心筋症についてみても、βミオシン重鎖遺伝子、トロポニンT遺伝子、トロポミオシン遺伝子などが肥大型心筋症の病因遺伝子であることが報告された。その他、ジストロフィン遺伝子やミトコンドリアDNA遺伝子の異常が心筋症の病因遺伝子としてあげられている。
    ここでは鹿大医学部第一内科教室の研究成果の一つであるFabry病について述べてみたい。
    Fabry病はリソゾーム水解酵素α−ガラクトシダーゼの欠損によって起るX染色体劣性の代謝疾患である。臨床病状は典型的と非典型的Fabry病とで異なる。一般にFabry病は希であるとされていた。しかし我々は、最近左室肥大をもつ230名の男性患者の血漿α−ガラクトシダーゼを測定したところ7名(3%)において非定型Fabry病を見出した。したがって原因不明の左室肥大の患者では本症であることを考慮すべきであると考えられる。7名中2名では本酵素のミスセンス変異が発見された。また残り5名では本酵素のmRNAの量が減少していることが証明された。(New Engl J Med 1995; 333:288-293)。家族について遺伝子解析と血漿酵素測定を行った結果、診断は多くの症例で酵素測定によって可能であるが、女性患者では遺伝子解析が必要な症例があることが明らかとなった。

  • 3月3日(月)第96回南海研センター研究会
    東南アジア島嶼部における森林地域の開発と統合
    増田美砂(筑波大学農林学系)
    16時30分 南海研会議室

    [要旨] 東南アジア島嶼部の熱帯林から産出される商品は、(1)チークをはじめとする特殊材、(2)フタバガキ科大径材を代表とする一般材、および(3)非木材林産物に大別することができる。(1)を産出するのは季節林であり、(2)および(3)は熱帯雨林を主産地とする。
    森林資源の開発システムは、それぞれの産物や周囲の環境の特質と商品化の時期、および市場のあり方に規定され、開発側からの要請のもとに政府による支配の領域が拡大し法体系が整備されてきた。本報告では、いくつかの事例を交えつつ、森林開発と統合の過程を概観したい。

  • 4月28日(月)第97回南海研センター研究会
    熱帯・亜熱帯果樹の生育適性環境を探る
    石畑清武(鹿児島大学農学部)
    16時30分 南海研会議室

    [要旨] 熱帯・亜熱帯地方を原産地とする果樹類は温帯地方のそれらに比べ数倍の種類が知られている。これら果樹類の熱帯・亜熱帯地方における果実生産量は種類により異なるが、近年かなりの種類が温帯地域の施設又は露地で生産が行なわれるようになった。 果樹類は原産地が必ずしも良品質果実生産の適性地とはいえず、経済的な生産は他の地域で行なわれている種類が多い。これら熱帯・亜熱帯果樹類を温帯地域で生産する場合、生育への環境の影響が大きい。
    熱帯及び温帯地方において、環境条件に起因する熱帯果樹類の生育障害が発生しており、それらの研究の現況及び研究のあり方等についていくつかの事例を交えつつ概観したい。また、若干の果実を提示して熱帯及び温帯の異なる環境下での生産物の比較を行ないたい。

  • 5月26日(月)第98回南海研センター研究会
    黒田景子(鹿児島大学法文学部)
    タイ・ラタナコーシン朝初期における南部統合政策とマレー半島部港市群
    16時30分 南海研会議室

    [要旨] 18世紀後半19世紀前半において、ビルマの攻撃により滅びたタイ・アユタヤ朝とその後継者トンブリー朝とラタナコーシン朝においては、国家の再建が初期の重要課題であった。新生タイ王朝は「アユタヤ朝」の国家形態を理想のモデルとしたが、近代産業革命に支えられた西欧の圧力と、活動が活発化しつつあった移民華人のうごきに対応して、より効率的な体制を編み上げて行くことが必要となった。
    その過程は王朝にとっての交易利権を支え、もっとも速く近代西欧勢力との交渉が始まったマレー半島部の交易ネットワーク再編に見ることができる。発表では、19世紀後半の改革期以前に、ラタナコーシン朝がその前近代国家システムの中でこれらを模索する姿をみる。

  • 7月14日(月)第99回南海研センター研究会
    インドネシアの水産事情
    市川英雄(鹿児島大学水産学部)

    [要旨] インドネシアでは長期の政治的安定を背景に経済開発が進められ、その中で漁業の発展も近年目ざましいものがある。
    漁業開発については、輸出向けと国内消費向けの2つの方向で進められている。前者では日本資本による開発輸入や地元華人系資本などによる日本をはじめ海外市場向けの水産物の生産を中心としており、その拠点となっている漁港では、漁港および関連施設の整備や企業による冷蔵・加工施設などもかなり整備されている。後者については国民所得の向上にともない増加した水産物の国内消費に対応するもので、伝統的な流通機構などにより配給されている場合が多い。
    本報告は、1996年科研費で訪問して得た水産事情を概説する。

  • 7月26日(土)-7月27日(日) 南海研センター公開講座
    「南太平洋―陸と海をまるごと考える―」

    毎年夏休みに南海研センターが開催している、太平洋とその周辺地域の自然と文化をテーマにした一般市民のための公開講座です。
    7月26日(土)
    • 12:50-13:50 太平洋の土台と変動:根建心具(鹿大理学部)
    • 14:00-17:00 世界をむすぶインターネット:青山亨(鹿大南海研)・二宮公紀(鹿大情報セ)[講義用ホームページ]
    7月27日(日)
    • 9:30-10:30 太平洋の深層の流れ:櫻井仁人(鹿大工学部)
    • 10:40-11:40 火山のめぐみと災い:北村良介(鹿大工学部)
    • 12:50-13:50 生命あふれる干潟のめぐみ:佐藤正典(鹿大理学部)
    • 14:00-15:00 古今東西の土間と板敷の生活:土田充義(鹿大工学部)
    • 15:10-16:10 遺伝子組み換え食品:衛藤威臣(鹿大農学部)
    募集要項を見る。
  • 10月27日(月)第100回南海研センター研究会
    アフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)の特徴
    片山忠夫(鹿児島大学農学部)
    16時30分 南海研会議室

    [要旨]  アフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)はアジアイネ(Oryza sativa L.)とともにイネ属約25種の中で2種のみが栽培種である。両者間での交雑は容易で、染色体対合は正常に近く、共通のAAゲノムによって構成される。しかし両者はそれぞれ他の野生2種と、Intrafertile groupを構成し、互いにIntersterile groupの関係により、その子孫は極めて得難い。
     アフリカイネはBC2000年頃Niger河上流で O.breviligulataから栽培化され、その後、Senegal, Gambia, Guinea Coastと次第に分布範囲を拡げ、東アフリカに迄分布した。現在は西アフリカが主な栽培地域であり、栽培、半栽培、野生の状態でみられる。O.sativa, O.longistaminata, O.breviligulataと同所性及び異所性を示すが、それには種々の生態的条件が関与している。この種は形態的、生理的及び生態的形質に O.sativa と異った、多分に野生種と同質のものがみられ、栽培史の違いに據るところが多いと考えられる。これらの形質は、雨期・乾期に関係して自然及び人為環境下で必須な要件と読み取れる。また、様々な障害に対する耐性、光合成能力、嗜好などに係わる多様性、農業的、生態的及び社会的背景から、今後も重要な作物であり続ける。





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